本研究の目的は,エネルギーマネージメントを考慮した振動発電による自己完結型電源システムの開発であり,高出力化のための各種発電構造の提案(間接衝撃構造による10mW出力の達成),発電した電力に対する駆動負荷を考慮したパワーマネージメントシステムの構築,発電装置の耐久性評価と高耐久化を実施してきた。 その,具体的な応用として工場内の機械振動を利用した振動発電装置を開発し,これにより無線センサノードを駆動して機器の故障診断を自己完結的に行うシステムを構築した。ここでは,発電量の制約に起因した低サンプリング(50ms)な情報に対しても,学習理論を導入することで高精度(90%以上)に故障予測が可能な診断アルゴリズムもあわせて提案した。電源確保からセンサ駆動,無線送信そして故障診断を行う総合的なシステムの開発が達成でき,今後の製品化,産業応用が期待できる。 また,昨年度に提案・試作した災害医療現場で利用可能な発電靴に対し,間接衝撃構造を応用することによる高出力化(1mW/step)を目指した構造開発と,汎用化のためのインソールに導入可能な構造の提案,発電電力の携帯電話への給電システムの開発を実施しその有効性を実験検証した。今後,大学附属病院の医療現場での導入実験を検討している。 実施項目に関連する研究成果として,Journal論文2編ならびに国際学会2件の発表,1件の特許出願を行っている。自己完結型電源とセンサノードシステムによる故障診断システムの開発に関しては,UTeMEX2019(UTeMイノベーション展2019)で金メダルを受賞した。災害医療現場で利用可能な発電靴の開発に関しては,第6回ぐんぎんビジネスサポート大賞(努力賞)を受賞した。
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