研究課題/領域番号 |
17K00661
|
研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
小松 俊哉 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (10234874)
|
研究分担者 |
姫野 修司 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (60334695)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 都市ごみ / OFMSW / 下水汚泥 / 混合消化 / バイオマス利活用 |
研究実績の概要 |
下水処理場の消化槽に下水汚泥とともに未利用バイオマスを投入し,バイオガス量を増産させる混合嫌気性消化技術の更なる適用拡大が期待されている。本研究では,その殆どが焼却処理されている都市ごみ有機成分(OFMSW)に着目し,下水汚泥との一括バイオガス化技術を開発,評価する。 29年度は,OFMSWの中でも研究例が少なく,さらに潜在的エネルギー量は生ごみを大きく上回る紙類に特に焦点を当て,主に回分メタン発酵実験を実施した。紙類の種類として,一般的な可燃ごみ区分として収集される都市ごみ中の紙類を調査して種類を選定した。代表的な実験では,ティッシュ,新聞紙,オフィス系雑紙,段ボールを基質バイオマスとし,比較として下水汚泥と実際の家庭系生ごみも試験した。 回分実験の結果,種汚泥の自己分解分を差し引いて算出した投入VS(有機物)あたりの正味のガス発生量は,試験終了時(20日目)において生ごみ及び下水汚泥の754,513(mL/g-VS)に対して,それぞれ703,429,756,580(mL/g-VS)となった。したがって,易分解性の生ごみほどは高くないが,マテリアルリサイクルが困難なティッシュやオフィス系雑紙は生ごみに匹敵するガス化ポテンシャルを有していることが明らかとなった。バイオガス中のメタン比率は生ごみの約63%に対して約55~59%と若干低かった。一方で,生ごみと比べて上澄み中の溶解性有機物濃度は顕著に低い傾向を示した。回分実験は複数回行い,種汚泥の種類(下水消化汚泥または生ごみメタン発酵施設の消化汚泥)に関わりなく最終的な消化特性は同等であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
29年度は,可燃ごみ組成の調査(可燃ごみ中の紙ごみの種類や比率,1人当たりの発生量の概略を把握),および代表的紙類の成分分析(各種の紙類をサンプルとした固形分量(TS),有機物量(VS),C/N比等の測定)により基礎データを得た後に,紙類の回分式メタン発酵実験を実施し各種紙類のガス化や固形分分解ポテンシャルを把握することを当初の研究実施計画としており,それらの検討事項をおおむね順調に進捗できたため。 特に研究計画の中心としていた各種紙類の回分式メタン発酵実験では,紙類正味のガス発生量,メタン含有率,固形分分解率,溶解性COD,アンモニア性窒素等で評価し,各種紙類の分解性やその差異などを明らかにすることができた。回分実験では種汚泥の種類に関わりなく再現性の高いデータが得られている。また,混合消化システムにおいて同時に投入する下水汚泥と生ごみについても回分実験を実施し,紙類との比較を含めてその消化特性を明らかにした。
|
今後の研究の推進方策 |
30年度は下水汚泥とOFMSWの混合消化の連続実験を中心に研究を実施する。実際の適用においては,紙ごみ以外に生ごみも投入することが現実的であり,本研究のOFMSW利用システムでも想定している。そこで,紙類を生ごみとともに混合した連続実験を実施する。下水汚泥単独系(対照系),および下水汚泥にこれらのOFMSWを混合した系(混合系)の2種類のラボスケール消化槽の連続運転を行う。用いる下水汚泥は標準活性汚泥法の混合濃縮汚泥(TS約3.6%)である。消化汚泥の引抜きと基質の投入を定期的に行い,対照系の滞留日数を標準的な30日とする。なお,可燃ごみ中での存在割合が高い紙類は裁断のみで比較的高いガス発生を示したため,コスト面を考慮し,薬品を用いた前処理は行わない方針とする。 各条件で定常状態におけるガス発生や固形分分解の消化データを得る。下水汚泥の投入量は一定とし,OFMSWの投与負荷は排出量を考慮して段階的に上昇させる。
|