垂直軸風車は、市街地空間への導入事例が増えてきているが、その空力騒音特性に関する研究事例は非常に少なく、十分な騒音低減対策が施されていない。そこで本研究では、直線翼垂直軸風車の出力特性を著しくは損なわない空力騒音低減手法の開発を目指し、アームの断面形状、ブレード後縁に取り付けた鋸歯状突起(セレーション)の形状、ブレード表面上に取り付けたトリップワイヤが、風車出力特性および騒音特性に与える影響についてマイクロフォンアレイを用いた風洞実験と数値流体力学解析により調べた。アーム断面形状については、翼型の前縁形状を長方形の短編に接合した形状(以降、楕円型と称する)を考案し、翼型のアームと比べて、楕円型アームは、出力特性を著しくは損なわず、騒音レベルを顕著に低減することを確認した。さらに、空力騒音の原因となる変動圧力の値が、ブレードとアームの接合部付近で高くなることを明らかにした。そのため、この接合部付近のアーム形状を楕円型に類似する形状にすることが推奨される。ブレード後縁に取り付けるセレーションについては、セレーションをつけない場合に比べて騒音レベルが顕著に低減される形状はあるものの、出力も総じて顕著に低下した。特にセレーションの歯が長く、角度が大きくなるほど、出力と騒音レベルが低下する傾向があった。今後、出力が顕著に低下しない形状を検討していく予定である。ブレード表面上に取り付けたトリップワイヤは、ワイヤ径が比較的大きいと出力が著しく低下した。逆に、ワイヤ径が比較的小さいと、出力が上昇し、騒音レベルが低減される設置位置が存在した。しかし、その騒音低減量は非常に小さかった。
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