下水処理で発生する余剰汚泥は我が国の主要な産業廃棄物である。余剰汚泥の減容手段として嫌気消化法が普及しているが、それでも減容率は30%程度であり、残り70%は『これ以上は生分解が進みにくい残渣(消化汚泥)』として残存する。最近になって研究代表者は、この消化汚泥を分解できる糸状菌6株を土壌から初めて見出した。そこで本研究では、消化汚泥分解菌、酸・水素生産菌、微細藻類の三者を併用することで消化汚泥から水素メインのバイオガスを発酵生産するためのバイオテクノロジー基盤研究を行う。 今年度は、「凝集剤耐性を持つ消化汚泥分解菌変異株の開発」および「汚泥分解酵素と併用可能な水素生産菌叢の開発」について検討した。汚泥に混入する凝集剤が汚泥分解菌の生育を阻害することを解決するために高濃度の凝集剤存在下で長期間の培養を行ったが、凝集剤耐性を獲得した変異株を得ることはできなかった。他方、汚泥の処理法の検討を進める過程で、酸・アルカリ等を使用しなくても、十分量の水洗により汚泥に混入する凝集剤をある程度は減じることが可能であるとわかり、これを用いた場合は、分解菌は酸・アルカリ処理をした汚泥の時と同様の生育を示し、汚泥分解酵素の活性も高まった。これは多量の水洗は必要とするものの、毒劇物を使わなくても凝集剤を除去できることを意味しており、将来の実用化を目指す上で有用な処理法を見出すことができた。 他方、消化汚泥から直接水素を発酵する嫌気菌叢の探索を行ったところ、3つの菌叢を得ることができた。これらの菌叢メンバーをDGGEで分析したところ、従前には水素発酵で研究対象となっていなかった株から構成される菌叢であることがわかった。
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