研究課題
下水処理で発生する余剰汚泥は我が国の主要な産業廃棄物である。余剰汚泥の減容手段として嫌気消化法が普及しているが、それでも減容率は30%程度であり、残り70%は『これ以上は生分解が進みにくい残渣(消化汚泥)』として残存する。最近になって研究代表者は、この消化汚泥を分解できる糸状菌6株を土壌から初めて見出した。そこで本研究では、消化汚泥分解菌、酸・水素生産菌、微細藻類の三者を併用することで消化汚泥から水素メインのバイオガスを発酵生産するためのバイオテクノロジー基盤研究を行う。2018年度は、2017年度に見出した「汚泥分解酵素と併用可能な水素生産菌叢」の性状について検討した。得られた3つの菌叢は消化汚泥から直接水素を発酵することができたが、現時点では微量であった。これらの菌叢メンバーをDGGEで分析したところ、従前から糖等を基質とした水素発酵で知られるClostridium属ではなく、これまで研究対象となっていなかったFonticella属、Gracillibacter属、Romboutsia属、さらには好熱菌のThermoanaerobacter属や加水分解酵素で知られるBacillus属が含まれた多様な微生物生態系から構成される菌叢であることがわかった。培養上清の酵素活性を測定したところ、キチナーゼとケラチナーゼが主な酵素活性であり、弱いながらもヘミセルラーゼ活性が検出された。他方、セルラーゼ活性は認められなかった。
2: おおむね順調に進展している
2017年度に見出した汚泥分解・水素生産菌叢の生化学的性状を明らかにできた点が良かったと自己評価できる。以降の研究も順調に進捗していくことが期待されることから、「おおむね順調に進展」と判定した。
2017年度に研究してきた好気性の汚泥分解糸状菌との併用により水素生産を促進できるか検討する。さらに、両者を併用した汚泥資源化プロセスの構築を目指す。
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Bioscience, Biotechnology and Biochemistry
巻: 82 ページ: 1-7