研究課題/領域番号 |
17K00668
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
藤井 克彦 工学院大学, 先進工学部, 教授 (30333660)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 消化汚泥 |
研究実績の概要 |
下水処理で発生する余剰汚泥は我が国の主要な産業廃棄物である。余剰汚泥の減容手段として嫌気消化法が普及しているが、それでも減容率は30%程度であ り、残り70%は『これ以上は生分解が進みにくい残渣(消化汚泥)』として残存する。最近になって研究代表者は、この消化汚泥を分解できる糸状菌6株を土壌か ら初めて見出した。そこで本研究では、消化汚泥分解菌、酸・水素生産菌、微細藻類の三者を併用することで消化汚泥から水素メインのバイオガスを発酵生産す るためのバイオテクノロジー基盤研究を行う。 2018年度は、牛糞堆肥から得られた汚泥分解・水素生産菌叢の性状について検討し、消化汚泥から直接水素を発酵することができたこと、菌叢メンバーが従前から水素発酵で知られる属だけではなく、これまで研究対象となっていなかった属も含まれていることが新知見として得られたが、水素生産量は微量であり、研究成果の産業応用可能性については期待薄であった。そこで2019年度は、一般土壌、河川土壌、草食動物糞等、微生物探索源を拡大し、優良な性質を持った消化汚泥分解微生物を得られるよう研究を行った。その結果、河川土壌や羊新鮮糞を含む数種類のサンプルで、消化汚泥を分解するとともに、メタンまたは水素を生産できる菌叢を得ることができた。河川土壌Aからは消化汚泥1gあたり20 mLのメタン、河川土壌Bからは14 mLのメタン、羊糞からは3 mLの水素を生産する菌叢が得られた。いずれの菌叢も、これ以上発酵に用いられない消化汚泥を唯一の基質として生育し、メタンや水素といったバイオガスを生産することが興味深い点である。分解酵素活性を検討したところ、セルラーゼ、キチナーゼ、プロテアーゼ活性が検出され、消化汚泥の主成分である微生物細胞壁残渣を栄養源として生育、バイオガス生産をしている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に見出した汚泥分解・バイオガス生産菌叢の生化学的性状を明らかにできた点が良かったと自己評価できる。現在、研究成果をまとめた論文を投稿中である。以降の研究も順調に進捗していくことが期待されることから、「おおむね順調に進展」と判定した。
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今後の研究の推進方策 |
得られた菌叢の最適培養条件を模索するとともに、実験台に配置可能な小型バイオリアクターを作成し、バイオガス生産量と汚泥分解量についてさらに詳細に検討を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要物品の安価購入に努めた結果、1円の余剰が生じた。次年度の研究に有効利用したい。
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