下水処理で発生する余剰汚泥は我が国の主要な産業廃棄物である。余剰汚泥の減容手段として嫌気消化法が普及しているが、それでも減容率は30%程度であり、残り70%は『これ以上は生分解が進みにくい残渣(消化汚泥)』として残存する。最近になって研究代表者は、この消化汚泥を分解できる糸状菌6株を土壌から初めて見出した。そこで本研究では、消化汚泥分解菌、酸・水素生産菌、微細藻類の三者を併用することで消化汚泥から水素メインのバイオガスを発酵生産するためのバイオテクノロジー基盤研究を行う。2019年度は、河川土壌から得られたバイオガス生産菌叢の世代ごとのガス生産量の遷移を検討するとともに、分解酵素活性を検討した消化汚泥の主成分である微生物細胞壁残渣を栄養源としてて生育し、バイオガス生産をしている可能性が示唆された。 2020年度は菌叢を構成する微生物メンバーの解析を行った。その結果、菌叢にはClostridium属やEnterobacter属のように従来から知られている酸・水素生成菌に加えて、Pseudomonas属やAcinetobacter属等の好気細菌と子のう菌系糸状菌および原生生物が存在しており、培養液中の溶存酸素の除去や硝酸塩呼吸による速やかな酸化還元電位の低下に寄与していることが示唆された。また、メタン生成古細菌についても複数の属が見られたが、その中にはmethanobacterium属やmethanosacia属等の既知の属種に加えて、系統不明の一群が含まれることが示唆された。
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