研究課題/領域番号 |
17K00675
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研究機関 | 釧路工業高等専門学校 |
研究代表者 |
川村 淳浩 釧路工業高等専門学校, 創造工学科, 教授 (20596241)
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研究分担者 |
井田 民男 近畿大学, バイオコークス研究所, 教授 (70193422)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バイオマス / バイオコークス / クリンカー / 燃焼灰 / 木質ペレット / ペレットストーブ / コンクリート混和材 |
研究実績の概要 |
木質ペレット焚き家庭用ストーブの普及を阻む一因となっているクリンカー形成は、これまでの研究(JSPS科研費26340108)成果として、木質ペレットと同じ原料から製造したバイオコークスとの混焼をおこなうことで抑制されることが示唆されたが、混焼率を向上させるためには木質ペレットと同サイズとした小径バイオコークスの生産性の低さが課題となった。本研究は、その研究で得られた成果を更に進展させるために、市販の木質ペレット焚き家庭用ストーブに適合する大きさ(φ6)となる小径バイオコークスの生産性を向上させる技術開発と、混焼比率を高めた燃焼比較実験を通して、燃焼形態の違いによるクリンカー形成機構を更に深く追求することを目的としている。 平成30年度は、主に、平成29年度に製作した6連式成型ユニットを用いたバッチ式製造工程の改善に取り組んだ。具体的には、初期含水率の最適化などにより、小径バイオコークス1個あたりの大きさを85%増加させた。更に、2基の成型ユニットを用いて成型工程をずらすことにより、単位時間当たりの製造能力を5~9割程度向上させるシステムを構築した。この結果、平成29年度に製作したシステムの2.8~3.5倍の生産性向上が実現できた。 そして、燃焼比較実験機による混焼試験に向けて、改善した小径バイオコークス製造システムを用いて多くの小径バイオコークスを生産した。 また、木質バイオマスの燃焼後の燃焼灰の有効利用を目的として、木質灰を混和材としたコンクリート材(モルタル)を試作し、強度試験(曲げ強度および圧縮強さ)による特性比較評価を実施した。この結果、材齢28日の範囲では、木質灰を用いたモルタルの強度は普通モルタルやフライアッシュモルタルに比べて劣る傾向にあることが判明した。燃焼灰のクリンカー形成メカニズム解明と併せて、上記の強度低下の要因を検討する必要があると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、先行研究(JSPS科研26340108)の成果を踏まえた次のステップとして、小径バイオコークスの生産性を向上させる技術開発と、混焼率を高めた燃焼比較実験を通して、燃焼形態の違いによるクリンカー形成機構を更に深く追求することを目的とした。平成30年度は以下の成果が得られた。 a)灰分組成の異なる小径バイオコークスの製造:平成29年度と灰分組成の異なる木質ペレットを原料として小径バイオコークスを製造した。 b)生産性の高い小径バイオコークス製造システムの設計・製作・改善、小径バイオコークスの製造:小径バイオコークスの製造能力向上を目的として、平成29年度に製作した6連式成型ユニットを用いたバッチ式製造工程の改善に取り組んだ。具体的には、初期含水率の最適化により、小径バイオコークス1個あたりの大きさを85%増加させた。更に、2基の成型ユニットを用いて成型工程をずらすことにより、単位時間当たりの製造能力を5~9割程度向上させた。この結果、平成29年度に製作したシステムの2.8~3.5倍の製造能力向上が実現できた。 c)燃焼比較実験機の改良:平成29年度の実験結果をもとに、高混焼比率に適した火格子を検討した。 d)組成の分析とクリンカー形成機構の違いを探る実験・解析・考察:原料としての使用を計画していた木質ペレット製造業者倒産のため、平成29年度同様JSPS科研費26340108の残りを用いた。平成29年度に製造した小径バイオコークスの常温圧縮試験結果から、外観の色変化よりバイオコークス化していることが推察された。同じ原料から成る木質ペレットと小径バイオコークスを用いて、混焼比率をパラメータとする燃焼比較実験をおこない、消火後の燃焼灰生成の状態、及びクリンカー形成の状況から、クリンカーの形成機構の違いを探った。 e)成果報告:得られた知見をまとめ、国内の学会での講演発表をおこなった。
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今後の研究の推進方策 |
a)灰分組成の異なる小径バイオコークスの製造:クリンカー等への懸念から、家庭用ストーブ向け木質ペレットに対する低灰分化の要求が高まり、灰分の多い木質ペレットの入手が極めて困難となった。また、産業用の木質ペレットなども調達が困難であることから、既に入手済みの数種の木質ペレットの中から選定して使用することとする。 b)小径バイオコークス製造装置の改良:充填量の最大化と製造工程のパラレル化で単位時間当たりの生産量を向上させた「生産性の高い小径バイオコークス製造システム」について、製作工程に占める原料充填工程が相対的なボトルネックと判明したことから、この課題に対する取り組みを進める。 c)燃焼比較実験機の改良:最大炉床負荷や燃焼空気配分の異なる高混焼比率に適した火格子を製作する。 d)組成の分析とクリンカー形成機構の違いを探る実験・解析・考察:組成の異なる原料で成型した小径バイオコークスを用いて、比較燃焼試験を実施する。この燃焼比較実験では、原料別、混焼比率、そして空気過剰率をパラメータとし、炉内温度、燃焼温度、燃焼灰温度、排ガス組成、燃焼過程の赤外線画像、消火後の燃焼灰生成の状況、及びクリンカー形成の状況から、クリンカー形成機構の違いを探る。 d)報告書作成と成果報告:得られた知見をまとめ、国内外の学会での講演発表とこの分野の研究者たちとの意見交換をおこない、これらを踏まえて論文投稿をおこなう。 e)木質バイオマスの燃焼後の燃焼灰の有効利用を目的として実施した、木質灰を混和材としたコンクリート材(モルタル)の試作と強度試験(曲げ強度および圧縮強さ)による特性比較評価において、普通モルタルやフライアッシュモルタルに比べて劣る傾向にあることが判明したことから、燃焼灰のクリンカー形成メカニズム解明と併せて、上記の強度低下の要因を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
日本木質ペレット協会が制定した「木質ペレット品質規格」に基づいた太さφ6の小径バイオコークスを製造するため、平成29年度に6個の成型孔を放射状に配置した成型器と、バッチ式シーケンス機能による成形圧力保持の自動化システムからなる「生産性の高い小径バイオコークス製造システム」を設計・製作した。 平成30年度当初は、製作工程に占める燃料粉体充填の時間が相対的なボトルネックのひとつであることから、この課題に取り組むことを予定していたが、平成29年度に取り組んだ生産性向上策の未解決部分に優先的に取り組むことが有効と判断し、この解決に取り組んで大きな成果が得られた。 具体的には、平成30年度は、平成29年度に製作した小径バイオコークス製造システムに対して、初期含水率の最適化などにより小径バイオコークス1個あたりの大きさを85%増加させた。更に、2基の成型ユニットを用いて成型工程をずらすことにより、単位時間当たりの製造能力を5~9割程度向上させるシステムを構築した。この結果、平成29年度に製作したシステムの2.8~3.5倍の生産性向上が実現できた。 今後も引き続き、この改善された製造システムを使用して、小径バイオコークスの生産をおこない、引き続き燃焼比較実験に取り組む。
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