研究課題/領域番号 |
17K00676
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研究機関 | 広島商船高等専門学校 |
研究代表者 |
大沼 みお 広島商船高等専門学校, 一般教科, 准教授 (70594076)
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研究分担者 |
三角 修己 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (90583625)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 藻類バイオマス燃料 / 極限環境 / 単離 / オルガネラ / 油滴 / 細胞増殖 / ゲノム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、微細藻類による低コストの脂質大量生産法を実験室レベルで確立して、藻類バイオマス燃料の普及・発展に寄与することである。そのために、 以下の二つのアプローチにより研究を進めている。(1) 先行研究で開発した単細胞紅藻C. merolae (シゾン)の新規培養法である高効率燃料生産条件を用いて、ゲノム情報を基盤にした解析により、細胞増殖を維持したまま高率に脂質を生産するメカニズムの解明を目指すとともに脂質高生産株の育種を行う。(2) 新規の脂質高生産藻類を単離し、脂質を高生産する培養条件を決定する。 (1) シゾンを用いた、細胞増殖を阻害しない脂質蓄積条件下における網羅的な遺伝子発現解析から、脂質生産、油滴形成、脂質蓄積に関わると考えられる遺伝子を9遺伝子選抜した。特に重要と考えられた4遺伝子について脂質の高生産性との関連を調べる為に、変異体を作製した。これまでに当該鍵遺伝子の高発現形質転換体が獲得され、現在その表現型について解析を行っている。また、遺伝子機能の解析のためのノックアウト相同組み換え体を併せて現在作製している。 (2) 低コストの大量培養系を実現するためには、開放系培養が望まれるが、閉鎖系培養よりも他種生物の混入と増殖の可能性が大きくなる。培養系のpHを強酸性或いは、強塩基性にすることで他生物の混入を抑制できる。本年度は、平成29年度に高pHの温泉より単離された、分裂細胞の多い時期でも脂質を蓄積する脂質高生産藻類について、系統解析およびガスクロマトグラフ質量分析による脂肪酸解析をおこなった。新規脂質高生産藻類は、緑藻クロロコッカムに属し、主に9種類の脂肪酸を含む脂質を生産していた。得られた脂肪酸のうち、特に含有量の大きい脂肪酸は、他の脂質生産藻類と同様にオクタデセン酸であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)昨年度やや遅れているとしたシゾンの変異体作製と解析は、技術的問題などが解消され、作製と解析をおこなえるようになった。 (2)新規単離藻類は、順調に解析が進み、現在、より生産性をあげるための条件検討をおこなっている。 よって進行状況をおおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
(1)今後は得られた脂質生産の鍵遺伝子の高発現体、ノックアウト相同組み換え体について、増殖性、脂質生産性などを検討し、細胞が増殖しながら脂質を生産するメカニズムの解明を目指す。作製した変異株の脂質生産性が強化されていた場合は、高脂質生産株として有用かどうかの評価をおこない、高脂質生産系の確立をめざす。 (2)高脂質高生産が認められた新規単離藻類については、寒天培養は一般的な藻類と同等の増殖速度だが、液体培養法での増殖が遅いことが分かっている。今後は、条件検討をおこない、より高増殖、高脂質生産を示す液体培養条件を決定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
山口大学大学研究推進機構の協力を得ることができ、脂肪酸解析に必要な費用が少なくてすんだため。次年度物品費として使用予定。
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備考 |
この研究課題の基盤となっている新規脂質生産法の特許が登録された。 発明の名称「紅藻シアニジウム目のための脂質生産用培地組成物および脂質生産方法」発明者(大沼みお、黒岩常祥,黒岩晴子,井元祐太)特許第6359314号 (登録日:平成30年6月29日、出願日:平成26年3月30日)
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