研究課題/領域番号 |
17K00678
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
笹尾 俊明 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (90322958)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 循環経済 / 廃棄物処理 / 資源管理 |
研究実績の概要 |
廃棄物処理の観点に重きが置かれた3R政策から、資源管理の視点を含んだ循環経済へと移行するためにどのような仕組みが必要かを検討することを主な目的に、本年度はベルギーにおける容器包装廃棄物のリサイクル制度について調査した。ウェブサイト等での公表資料に加え、同リサイクルの運営機関であるFost Plusへのヒアリング調査も行い、主に以下の内容を明らかにした。ベルギーでは、自治体による廃棄物収集を活用しながらも、容器包装廃棄物の収集費用については全額、Fost Plusを通じて事業者が支払う仕組みを採用している。それでも収集・選別の効率性を維持し、 資源価値の高い品目も容器包装リサイクルの対象とすることで、グリーンマークのライセンス料金を支払う事業者にも過度な負担とはなっていない。こうしたベルギーの制度は、日本の容器包装リサイクルの環境負荷と社会全体の費用の低減をさらに進める上でも参考になる点が多い。 並行して、ベルギーのフランダース地方の一部自治体で導入されている、廃棄物の重さをベースにした従量制の有料化による廃棄物減量効果についての実証分析も行った。内生性を考慮するために、動学パネルデータ分析を行った結果、重さベースの有料化には廃棄物減量効果があるが、大きな減量効果は特に有料化実施直後に見られ、継続的な効果はそれほど大きくないこと、また収集価格の上昇が廃棄物の減量をもたらすことを確認した。 また古紙を代表例として、再生財市場における需要と供給関数を推定するために必要なデータを収集するとともに、適切な計量経済分析手法について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度前半に滞在したベルギー・ブリュッセルでの在外研究を通じて、同国の容器包装廃棄物のリサイクル制度については、その最新の状況を詳細に把握することができた。また、当初の計画には予定していなかった、ベルギー・フランダース地方の重さをベースにした従量制の有料化についても、同国のルーヴェン・カトリック大学の研究者との共同研究を通じて、実証分析に着手することができた。一方で、当初2018に予定していた再生財の価格決定メカニズムの分析については、推定に必要なデータの加工と整備にとどまり、実際の分析に着手することはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
循環経済への転換に向けた廃棄物と資源の統合的管理のあり方を検討するために、今年度は主に以下の2つの研究に取り組む計画である。 第1に、古紙やプラスチック等を主な対象とした再生財市場に関する研究を継続して行い、再生財の需要関数と供給関数を推定する。ここでは過去のトレンドを考慮した動学的な計量経済モデルを想定して分析を行う。そして、それらの推定結果に基づいて、再生財の価格決定メカニズムを明らかにする。また、再生財の価格や需給についての将来予測を通じて、資源価格の変動に耐えられる頑健な再生財市場を構築するための課題と方策について検討する。 第2に、ベルギー・フランダース地方の重さをベースにした家庭系廃棄物の従量制有料化の効果について、残余ごみの排出量だけではなく、容器包装資源物など他の廃棄物の排出量への影響も分析する。重量と容積の換算値を変更した場合の頑健性やより信頼性の高い推定モデルでのチェック等も行う。これらの推定結果を参考に、日本において循環経済を実現するための廃棄物と資源の統合的管理上の課題と方策を検討する。 最後に、本研究の3年間のまとめとして、循環経済への転換に向けた廃棄物と資源の統合的管理のあり方について総括する。これらの研究成果については、環境経済・政策学会や廃棄物資源循環学会等の関係する学会で発表し、そこで得られたコメント等も踏まえて、必要な修正等を行い、関係する国際学術雑誌等に投稿する。
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