研究課題
本研究の目的は、家計や個人における、エネルギー・環境に関する貧困を測定するための新しい多次元指標を開発し、それを用いて有効な対策についての評価を行うことである。令和3年度は、引き続き、日本のエネルギー貧困、エネルギー脆弱性に関する実証分析、また、当テーマに関する国際比較研究を行った。具体的には、スペインの研究者とともに、EUの知見を勘案しつつ、我が国におけるエネルギー脆弱性に関する要因について整理・考察し、論文にまとめた。さらに、フランスの研究者とともに、エネルギーに関する貧困やエネルギー格差についての国際比較研究を行った。特に後者については、エネルギーに関する貧困をエネルギーサービスの利用量(熱量ベース)で直接評価するという独自の多次元エネルギー貧困指標を日本及びフランスに適用し、その結果、①通常の単一閾値アプローチでは地域別のエネルギーニーズの違いを適切に評価できず、複数閾値アプローチの方が望ましいこと、②フランスではガス、日本では灯油という主に暖房に使用するエネルギー種が、エネルギー貧困と格差の実態を理解する上で非常に重要であること、等が明らかとなった。令和3年度は、以上のような成果を国際学術雑誌等で発表した。本研究により、気候やその他の環境要因が類似している地域の国境を越えた比較の有用性が明らかとなった。また本研究は、今後エネルギー脆弱な人々のエネルギーニーズを保障しつつ、ガスや灯油をより低炭素のエネルギーに置き換えていくことが、包摂的なエネルギー転換(Inclusive low-carbon energy transition)を実現するために重要であることを示した。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件)
In: Rubio-Bellido, C., Solis-Guzman, J. (eds). Energy Poverty Alleviation: New Approaches and Contexts. Springer Nature.
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