研究課題/領域番号 |
17K00681
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
吉田 央 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40251590)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 農薬安全規制 / 化学物質規制 / 安全と安心 / レギュラトリーサイエンス / 市民参加 |
研究実績の概要 |
本年度の主たる研究実績は以下のとおりである。(1)2017年9月3日から7日にかけて、タイにおいて現地調査を行った。カセサート大学の研究者と意見交換したほか、大手農薬コンサルタントのクノール社から聞き取りを行った。(2)10月1日に北東アジア学会で報告した。(2)11月3日にロシア世界政治経済学会で学会発表を行い、ヨーロッパの化学物質規制(REACH規制)とアジアにおける状況の差異について議論した。(3)2018年2月3日に韓国経済学合同学術大会で発表し、韓国の研究者と韓国での農薬・化学物質規制の状況について議論した。とりわけ近年に韓国で発生した加湿器殺菌剤問題についての意見交換し、この事件の背景に、韓国における化学物質安全規制が急速に高度化する韓国の産業技術に追いついていないという問題があるという点で意見が一致した。(5)2019年度に予定している国際ワークショップに向け、第1次サーキュラー原稿を作成した。 学会で報告した内容を要約すれば概ね以下のとおりである。(1)日本における農薬規制は、当初は農薬の品質管理から始まり、急性毒性(農薬散布者の健康保護)、魚毒性、慢性毒性(食品残留)、生態系保護と段階的に発展してきた。これは韓国など発展途上国も同様である。(2)それぞれの段階で、要求される規制水準は高度化しており、それに応じて規制そのものにも高度な技術が要求されるようになっている、(3)これらの規制に係る費用のかなりの部分が農薬メーカーによって負担されているが、日本の農薬メーカーにとってその負担は軽くなく、メーカーの規模がより小規模な韓国など発展途上国においては負担困難である。(4)そのため発展途上国の農薬規制は、法律等はよく整備されているとしても実際の規制の運用には不十分な点がみられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、2019年度に国際ワークショップを開催し、研究者のネットワークを構築することを目指しているが、2017年度にはタイ・韓国・ヨーロッパの研究者と交流を行うことができた。研究計画はおおむね順調に進捗しているが、2017年度は学術雑誌への論文掲載ができなかった。ただし論文の執筆自体は進んでおり、次年度以降は積極的に投稿することができる見込みである。
|
今後の研究の推進方策 |
2018年度は、2019年度に予定している国際ワークショップに向けて引き続き準備を進める。第1次サーキュラーを関連する部署等で配布を進める。学会での発表を積極的に行う。2018年6月にドイツで開催される世界政治経済学会で報告するほか、国内・国外で開催される国際学会での報告を行う。 また、昨年度に行った現地調査および各国の農薬規制に関する情報集積を踏まえ、論文の作成を急ぎ、積極的に投稿する。本年中に少なくとも3本の論文を投稿することを目指す。とりわけ本年度は、日本の公害問題の経験を踏まえ、過去の日本における公害問題の発生および公害規制の発展と、現在進行中の発展途上国における農薬問題・農薬規制の理論的対比を行う。
|