研究課題/領域番号 |
17K00693
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研究機関 | 高崎経済大学 |
研究代表者 |
山本 芳弘 高崎経済大学, 経済学部, 教授 (20419435)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 再生可能エネルギー / 太陽光発電 / FIT / Net metering / 制度設計 |
研究実績の概要 |
現在、再生可能エネルギー利用を普及させる目的で、再生可能エネルギーを用いて発電したが自家消費しなかった電気(余剰電力)を一定期間にわたり一定価格で買い取る制度FIT(Feed-in tariffs)が、日本を含む多くの国・地域で導入されている。普及目的が達成された後は、FITに替わる新たな制度が必要になる。 今年度の研究では、まず現行FITの問題点を調査した。特に、一律の価格設定では気象条件等に必ずしもマッチしない過剰な設備投資が生じることと、普及後の価格水準はより効率性を重視すべきであることが明らかになった。 以上を考慮に入れて、次に、FIT終了後の余剰電力価格の設定方法について、提携ゲーム理論のコアを応用して研究した。コアとは、提携が生み出す価値をそのメンバーに配分する方法のひとつで、メンバーがどのように新たな提携を形成しようともコアに属する配分よりも有利な配分は得られない。 コアを応用した価格設定方法は次の通りである。地域内の家庭をひとつのグループと捉えて、太陽光発電を対象に、ある時間帯に余剰電力を送電線に供給した家庭の集合と、電力を送電線から購入した家庭の集合に分ける。次に、通常の電気料金を基準にして、2つの集合間での取引という観点から提携の価値を定義した。そして、第1の研究成果として、コアの中からある特定の配分方法に着目した余剰電力の価格設定方法を提案した。さらに、第2の研究成果として、第1の研究成果で提案した方法はFITと類似の方法であるNet meteringを拡張した形になっていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究でFITにかかわる問題点を調査するとともに、新たな価格設定方法を提案するための分析ツールについて検討してきた。前年度(平成29年度)における単著執筆が予定よりも時間を要したため当初の進捗はやや遅かったものの、今年度からは順調に進捗している。 今年度は、提携ゲーム理論のコアを応用した余剰電力価格設定方法について第1の研究成果を得て、国際会議World Renewable Energy Congress, Londonで報告した。また、FITに類似の方法であるNet meteringとの関連性を明らかにした第2の研究成果も得た。第2の研究成果は、次年度にEuropean Conference of International Association for Energy Economics, Ljublianaで報告することが受理されている。 これらの成果を補完する数値シミュレーションを次年度に行う予定であるが、そのアルゴリズムについても大まかな検討を行った。論文については、数値シミュレーションの結果も加えて、次年度に投稿予定である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、第1、2の研究成果を補完する数値シミュレーションを行う。アルゴリズムについての大まかな検討は今年度に行ったので、次年度の早い時期に数値シミュレーションを完了させる。できれば、既に受理されている国際会議での研究報告(次年度8月)にシミュレーション結果も含める。そして、これらをまとめた論文を作成し投稿する。 並行して、これまでの成果をさらに発展させた研究を行う。これまでは提携ゲーム理論のコアを応用した研究であったが、同じ提携ゲーム理論のシャプレイ値の応用も検討する。シャプレイ値とはコアと同じように提携が生み出す価値の配分方法のひとつである。あるメンバーが提携に加わることが提携の価値にどれだけ貢献したかに着目した概念である。 また、ネットワークの概念を導入した提携についても検討する。ネットワークを導入することで、どのような地域をひとつのグループとして扱うことができるかという点を明らかにできるのではないかと考えている。できれば次年度中に新たな研究成果を得て、次年度に第2回目の国際会議報告も行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
「次年度使用額」が生じたそもそもの原因は、平成29年度に予定していた国際会議での研究成果報告を、当該年度での単著執筆に予想以上に時間を要したので今年度(平成30年度)に延期したことによる。その結果、今年度は国際会議での研究成果報告を2回行う予定になっていた。第1回目の研究成果報告は8月上旬に行った。その後、第2の研究成果が得られたが適当な国際会議の開催日程が次年度(令和元年度)8月であったため、結局、今年度は1回しか国際会議での研究報告ができなかった(ただし、次年度8月の国際会議での研究報告は既に受理されている)。その結果、今年度第2回目の国際会議報告のための予算が「次年度使用額」となった。 次年度には、受理済みの国際会議(8月)研究成果報告のほかに、次年度の研究で得られる見込みの研究成果を別の国際会議で報告することも計画している。
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