最終年度では、前年度までに理論分析によって開発した報酬制度の概要について、できるだけテクニカルな表現を用いない論文を作成し公表した(IAEE Energy Forum)。さらに、その論文を基にしたポッドキャスト(Podcast)に招待され、作成し公表した(IAEE Podcast Series)。これらと並行して、前年度から開始した数値シミュレーションを完成させた。これにより、考案した報酬制度が実際にどのように機能するかを具体的に示した。そして、理論分析と数値シミュレーションを合わせた研究全体の論文を作成し公表した(Energy Economics)。また、公開講座において研究成果に関連する内容を講演した(第37回高崎経済大学公開講座)。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果は、再生可能エネルギーがある程度普及した段階において、再生可能エネルギーから発電された電気を社会で効率的、安定的に利用するための経済制度(報酬制度)を具体的に提案したことである。それは、電気の生産者と消費者からなる小規模のグループを所与として、一定時間(例えば15分)毎に発電量と消費量を比較した結果に基づいて報酬額を定めるというシンプルな制度である。これは提携形ゲームにおける解概念のひとつであるコア(Core)を基礎にしている。 この報酬制度の重要な特徴は、小規模なグループ単位で報酬を決定しているので、再生可能エネルギーの小規模分散型という特性を反映した制度になっている点である。その意義は、従来型の大規模集中型電源と本研究による小規模分散型電源のための経済制度を組み合わせることで、再生可能エネルギーをエネルギー需給システムの中に適切に組み込むことが可能になる点である。
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