研究課題/領域番号 |
17K00697
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
袖野 玲子 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 准教授 (70772565)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 水銀 / 水俣条約 / 有害廃棄物 / 最終処分場 / 維持管理年数 / 維持管理積立金 / 余剰水銀 |
研究実績の概要 |
2013年に水銀に関する水俣条約が採択され、今後世界的に水銀需要が低下する中、我が国では原燃料等に含まれる水銀が今後も継続的に排出されるため、これまで有価物として取り扱われてきた水銀を廃棄物として国内処分しなければならないことが想定される。このため、水銀廃棄物を超長期にわたって安全に管理・処分できる社会システムを構築することが急務である。 現行の水銀廃棄物の処理システムは環境リスクが十分に勘案されておらず脆弱なことから、本研究では余剰水銀量の将来推移を試算し、当該水銀の処分方法別の環境リスクと経済性を評価し、環境リスク及び経済的・社会的な持続可能性に基づいて水銀廃棄物の長期管理のためのレジリエントな社会システムを提示することを目指している。 今年度は、水銀廃棄物の処理システムを検討するに当たって必要な、将来の余剰水銀の発生見通しについて、まず、政府において進められている水銀管理政策や産業界の動向を基に、国内水銀フローの将来推移(2010~2050年)の算出し、さらに、条約の規制内容や欧米等の主要国の水銀政策を基に世界の水銀需給の見通しを推計して、今後の我が国における潜在的輸出量を試算し、国内の余剰水銀の発生量の将来推移を示した。 また、現行システム下における処分場の環境リスク許容度を検討するため、管理型最終処分場設置者に対して、浸出水中の有害物質濃度、処分場の終了から廃止までの予想期間及び潜在的溶出リスクを有する有害廃棄物の受入判断に関する調査を行い、有害廃棄物の受入許容度の主要因子を分析するとともに、処分場の埋立終了後から廃止までの期間(維持管理年数)を規定する関連要素について重回帰分析により分析を行った。また、廃棄物処理法第8条の5第1項に基づく維持管理積立金制度の妥当性を検証し、現行の有害廃棄物最終処分制度における課題を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた通り、国内余剰水銀の将来発生予測と世界の水銀需給バランスの将来予測、最終処分場における有害廃棄物処理状況調査及び調査結果の分析を平成29年度中に実施し、3本の査読付き論文を発表することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
国際的な水銀需給バランスについては、当初予想されていたよりも非鉄金属製錬業からの水銀回収が進んでいないことから、諸外国の動向について調査を進め、水銀需給バランス予測の精度向上を目指す。 また、我が国における水銀処理方策として、①金属水銀の長期保管(廃金属水銀を高純度に精製し、鋼鉄製の容器に密封して、遮断型構造の施設おいて長期保管を行う。)、及び②現行シナリオ:硫化処理物の埋立処分(廃金属水銀を硫化し、固型化した処理物を雨水浸透防止措置を行った上で管理型処分場に最終処分する。)の2つのシナリオを設定し、水銀溶出実験の最新の結果を反映して環境リスク及び経済性の評価を行った上で、水銀廃棄物の長期管理における社会システムを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費の負担額が変更となったため、当初計画より人件費代が少なくなった。 次年度のアルバイト代に繰り越す予定。
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