2013年に水銀に関する水俣条約が採択され、世界的に水銀需要が低下する中、我が国では原燃料等に含まれる水銀が今後も継続的に排出されるため、水銀を廃棄物として処分しなければならないことが想定される。このため、水銀廃棄物を長期にわたって安全に管理・処分できる社会システムを構築することが急務である。 本研究では、産業界の動向を基に、国内水銀フローの将来推移の算出、条約の規制内容や欧米等主要国の水銀政策を基に世界の水銀需給の見通しを推計して、今後の潜在的輸出量を試算し、国内の余剰水銀の発生量の将来推移を示した。また、現行システム下における処分場の環境リスク許容度を検討するため、管理型最終処分場設置者に対して処分場の終了から廃止までの予想期間及び有害廃棄物の受入判断に関する調査を行い、有害廃棄物の受入許容度の主要因子を分析した。さらに、持続可能な開発目標(SDGs)の観点から、SDGsの126のターゲットと水俣条約の関連を分析し、シナジーとトレードオフの関係について明らかにした。 2022年度は、水俣条約締約国会合など国際的な水銀廃棄物に係る議論のフォローアップを行うとともに、これまで金属水銀のまま長期保管を実施していた米国において、硫化による水銀安定化処理方策の検討が実施されたことから、米国環境保護庁の水銀担当者に米国の水銀廃棄物の最終処分に向けた見通しについてヒアリングを行った。また、環境省担当部局と日本国内の水銀廃棄物の最終処分先確保に向けた状況をヒアリングし、今後の方向性について意見交換を行った。さらに、本研究の成果をとりまとめ、全球的な余剰水銀の発生予測を地域別に示し、今後の水銀の処分体制について考察を行い、国際ジャーナルに投稿したほか(2度目の査読中)、韓国廃棄物学会からの招聘により、2023年5月に開催される水銀廃棄物に関する国際シンポジウムにて発表予定である。
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