研究課題/領域番号 |
17K00701
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
岡田 啓 東京都市大学, 環境学部, 准教授 (40450762)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 国際海運 / 国際航空 / 温室効果ガス / 産業構造 |
研究実績の概要 |
本研究は、国際航空と国際海運の規制状況を定性的に調査し、それら市場構造の差異の分析を通して比較をし、国際航空の温室効果ガス削減枠組みを国際海運産業に適用することができるのか、もしくは適用する際にいかなる点を留意しなければならないのかについて分析を行うことを目的としている。なお、本研究は、定性的整理と定量的な分析の両方に基づき、インプリケーションを出すことを意図している。 この目的を達成するために、主に4つの「(1)ICAOにおける温室効果ガス削減に関する議論過程の調査と分析」「(2)国際航空と国際海運の市場構造の共通点と差異に関する計量分析と定性的整理」「(3)Fair share概念の議論状況と展望」「(4)ICAOにおける温室効果ガス削減枠組の国際海運への適応可否に関する分析」を実施する。 2018年度は、上記の(2)と(4)に関連する項目について研究を実施した。具体的には、「国際海運の市場を計量分析するための基本調査」、「動学モデルに基づいた海運事業者の温室効果ガス削減実施条件」である。中でも後者について成果を出すべく海外Journal(具体的にはResearch in Transportation Economics誌)に投稿したことにより、その査読対応で多くのエフォートを割くこととなった。結果、掲載された。この査読対応の中で国際海運の温暖化対策に関する条件を理論・シミュレーションの双方から更に精査できた。加えて、国際海運の温暖化対策と費用面で関連がある大気汚染物質排出規制海域についての空間経済的な考察についても、海外Journal(Maritime Policy and Management誌)に投稿し、掲載となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前記のように「動学モデルに基づいた海運事業者の温室効果ガス削減実施条件」について記載した研究成果が海外Journalに掲載された。また、この査読過程において、国際海運において、どのような条件であれば海運事業者が船舶の燃費を改善するのか表すことができるのか再精査した。そのため、導出した条件を用いることにより、国際海運における枠組みでどのような経済的手段の導入が良いのか判定することができるようになった。そして、国際海運におけるこれまでの政策議論の経緯と国際航空におけるこれまでの政策の経過についてある程度の整理を実施した。また(2)を深化させるべく、文献調査や日本船舶技術協会主催の委員会に参加することにより、情報収集を適宜おこなった。この情報収集に基づき、本科研課題で行うべき事柄の再検討などを実施した。 他方、査読対応で多くのエフォートを割くこととなったため、当初の研究計画よりは進捗がやや遅れる結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)、(2)については、当初予定よりは遅れが生じている。(1)については、国際航空と国際海運におけるGHG削減のための経済的手段の状況をまとめ論文にすることを試みる。(2)については、各種情報を整理した結果、国際海運における産業構造と海事産業各ステークホルダーの関心事と経済的手段の関係を整理することを行う。そして、両国際交通の市場構造を再精査し、計量分析に移るようにする。途中経過をまとめ、国際会議における発表を行う。(4)については、前述のとおりベースの部分を成果としてJournalに掲載することができた。その結果に(2)の分析状況を踏まえ、政策の適応可能性に関して検討を行う。 なお、(3)は昨年の調査の結果、国際海事機関海洋環境保護委員会において資料が継続して出てこなかった。そのため、委員会において重要視されなかった可能性もあり、調査を中断する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に国際学会、具体的には27th Annual Conference of the International Association of Maritime Economistsにおいて発表を行う。そのための旅費、学会参加費が必要となる。そして、国際海運の産業における各ステークホルダーの関心事や政策に関する調査・分析を実施するために文献に関する複写費・購入費が必要となる。また調査結果を整理するためのコンピュータが必要になってくる。
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