研究課題/領域番号 |
17K00702
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
松本 安生 神奈川大学, 人間科学部, 教授 (00272683)
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研究分担者 |
刑部 真弘 東京海洋大学, 海洋工学部, その他 (00204173)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | コニュニティ表示 / 高層集合住宅団地 / 質問紙調査 / 省エネ行動 |
研究実績の概要 |
本研究の目的の一つである団地やマンション等の住棟全体で電力消費量を表示する「コミュニティ表示」を実装するため、横浜市及び神奈川県住宅供給公社の協力により横浜市旭区の大規模高層集合住宅団地において対象住棟を選定し、電力消費量の測定機器及び通信機器の仮設置を行った。また、ここで得られたデータをもとに電力消費量を表示するシステムの準備を行った。ただし、協力が得られた住宅団地内においては住棟全体の電力消費量を一括して測定できる系統がなく、住棟内の住居配置により6つの系統別に電力消費量を測定する必要が生じた。このため、本研究では対象とする住棟は1棟のみとして、住居配置別の6つの系統で電力消費量を測定し、これらを合算して全体の電力消費量を表示するシステムを構築することとした。 一方、既存の省エネ行動に関する研究などをもとに住民の省エネ行動の意思決定モデルとして費用効果評価や社会規範評価などの心理的要因に着目した仮説モデルを作成し、これを検証するための調査票の作成を行った。また、上述の通リ、電力消費量の表示が住棟全体に加えて、住居配置別の6系統となったため、仮説モデルでは住居の向きや階数などの住居特性のほか家族形態などの世帯特性も省エネ行動に影響を与えるものと考えた。この仮説モデルに基づき調査票を作成し、質問紙調査を行ったが、当初は考慮していなかった住居特性や世帯特性などの属性的要因の影響についても検証可能とするため、質問紙調査の対象者を20代から60代までの男女各300人(合計3000人)とし、これを確保するため首都圏に住む調査会社のモニターを対象とした大規模なインターネット調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画で示した通リ、本調査に協力いただく対象地域を選定し、住棟全体での電力消費量を表示する「コミュニティ表示」を実装するための機器及びシステムの準備を行うことができた。ただし、住棟全体の電力消費量を一括して測定する系統がなく、住居配置別の6系統で把握する必要が生じた。このため、3棟程度で予定した電力消費量の測定を、1棟のみとする一方で、住居配置別の6系統での電力消費量の測定と表示を新たに行うこととした。 さらに、住棟全体だけでなく住居配置別のコミュニティ表示を行うことから、住居配置が居住者の省エネ行動に与える影響についても追加的に検証することとした。このため、建築分野における省エネ行動に関する既存研究の整理を新たに行い、当初の心理的要因に加え住居の向きや階数などの住居特性、家族人数や形態などの世帯特性といった属性的要因が省エネ行動に与える影響を含む仮説モデルを構築した。この仮説モデルを検証するためサンプル数が限定される今回の調査対象地域ではなく、3000サンプル以上が確保できる調査会社のモニターを対象にしてインターネット調査を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、構築したコミュニティ表示を用いて電力消費量の測定を開始するとともに、夏季及び冬季においてそれぞれ省エネ行動を促す介入実験を行う。この介入実験では各世帯に対して、住棟全体及び住居配置別の電力消費量のデータをフィードバックするとともに、電力需要が高まる時間帯において電力消費量を抑制するピークシフトを想定し、コミュニティでの省エネ行動として団地内でのクールシェア(ウォームシェア)を行うことを予定してる。この介入実験による電力消費量の抑制効果については、コミュニティ表示を用いてリアルタイムでフィードバックする。なお、これらの実証実験のために、対象世帯に対しては事前に文書及び現地において説明を行う。 さらに介入実験による行動変容効果を検証するため、電力消費量の測定データの分析に加え、対象世帯に対する質問紙調査を行い、省エネ行動の変容及び省エネ行動を規定する心理的要因への影響や属性的要因が行動変容に与える影響等について分析を行う。なお、調査結果の信頼性を高めるため、質問紙調査は介入実験を行った被験者(実験群)だけでなく、同様な高層集合住宅団地の居住者(統制群)に対しても実施し、その比較検証を行う。 これらの分析結果については、対象世帯に対してフィードバックするとともに、環境科学会等での発表を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
電力消費量の測定を3棟程度で行う予定であったが、現地調査の結果、1棟6系統で行う必要が生じたため、測定機器及び通信機器を予定していた3セットから6セットに増やすこととした。これを当初予算内で準備するため測定機器の仕様等の変更を行い、一部の機器の納品及びシステムの構築については翌年度に繰り越した。これらは翌年度前半までに納品及び作業を完了する予定である。
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