研究課題/領域番号 |
17K00703
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
竹濱 朝美 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (60202157)
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研究分担者 |
歌川 学 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 安全科学研究部門、エネルギーシステム戦略グループ, 主任研究員 (40356572)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 変動性再生可能エネルギー / 発電機の起動停止-経済運用 / 電力需給 / 西日本 / 地域間連系線 / 石炭発電削減 / デマンドレスポンス / 電気自動車充電 |
研究実績の概要 |
本研究は、在来電源発電機の起動停止-経済運用(Unit Commitment with Economic Load Dispatching) の簡易モデルを作成し、2030年の西日本地域に太陽光発電を62GW, 風力発電を24GW導入し、再エネ電力の地域間送電とデマンドレスポンスを実施する場合について、電力需給バランス、CO2削減効果、石炭発電削減効果を推計した。具体的には、電力需要10%抑制、原子力発電非稼働、石炭火力発電の設備容量の極力削減、再エネ電力の地域間送電、LFC調整力の地域間融通、再エネ出力に応じた揚水発電の揚水運転、電気自動車充電とヒートポンプ(heat pump)加温稼働を活用する場合について、需給バランスの簡易推計を行った。九州、四国、中国の管区では、5月に大規模な電力過剰=出力抑制が必要になるが、8月の電力不足のリスクは小さい。他方、関西と中部の管区では、原発非稼働の場合、8月に電力不足リスクが残る。これを回避するには、関西と中部の管区では、電力需要を15%程度削減する必要がある。再エネ電力比率45%を達成するには、九州―中国、中国―関西の連系線容量を拡張し、夏季夕方の需要削減、揚水発電の揚水運転と電気自動車充電のタイミングに整合性を確保することが必要であると確認した。 発電機の起動停止-経済運用モデルは、社会科学研究者に使用可能な簡易モデルを目指して作成した。太陽光出力に応じた揚水運転、電気自動車充電、調整力の地域間融通について、基本モデルを作成できた。研究成果を、Solar Integration Workshop や国際会議Grand renewable 2018、風力エネルギー利用シンポジウムで発表した。今後は、再エネ電力の広域送電に関して、OCCTOの送電線潮流データから、送電線活用実態を分析する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発電機の起動停止―経済的運用モデルについて、基礎的な設計を作ることができた。揚水発電の運転モデルについて、基本的なモデルを作成することができた。Solar Integration Workshop、および風力エネルギー利用シンポジウムなどを通じて、専門研究者と交流することができ、モデルの改良点について、有益なアドバイスを得ることができた。地域連系線の送電データについて、データの扱い方等について、有益なアドバイスを得た。西日本地域のうち、北陸管区を除く地域について、発電機にかかる基礎的なデータの整備を進めることができた。Matlabの操作について、習熟が進んだ。これらにより、概ね、作業は順調に進んでいる。 西日本地域の電力需給について、北陸管区を除いて、解析の方法及び手順を概ね作ることができた。 Matlabのデータ入力と出力、複数のエリアの計算について、できるだけ計算を自動化させることが必要であるが、この点で、まだ改良すべき課題が残っている。さらに、石炭火力削減を評価するためのモデル改良が必要であること、電源種類サブグループの変数を増やす必要がある。揚水発電の運転モデルについても、電力管区と季節により、運転パターンと時間パターンを変更する必要があり、この改良に時間がかかっている。電気自動車の充電行動に関して、時間別データの入手が課題である。調整力地域間融通を簡易に概算するモデルについても、より精緻化が必要である。電気学会の先行研究の検討を進めて、必要なパラメータについて整理すること、地域内送電網の仕様について、データの整備を行う必要がある。今年度は、これらの課題について、取り組む。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、①再エネ電力の広域送電に関して、OCCTOの送電線潮流データから、送電線活用の実態分析を進める。②西日本の電力管区について、地域内送電線の系統混雑を評価するモデルを試みる。これには、電気工学研究者の助力が不可欠であるため、立命館大学理工学部の研究者から協力を得る。電気工学研究者との協力により、地域内送電線の活用実態の分析を進める。③火力発電機の起動停止-経済的運用については、石炭火力設備容量の削減規模、および、必要なベース電源規模を評価できるものに改良する必要がある。これについても、電気工学の研究者からの協力を得る。④風力および太陽光電力の地域間送電について、地域間送電線の容量拡張の効果を評価できるように改良する。⑤揚水運転モードと、太陽光出力に対応した電気自動車充電タイミングの整合性を改良する。これらの改良により、⑥西日本地域について、2030年の電力需給推計、CO2削減効果、石炭火力削減規模、ベースロード電源発電の削減効果、燃料費への影響について、まとめをおこなう。 研究成果は、風力エネルギー利用シンポジウム、International Workshop on Integration of Solar Power into Power Systemsなどで発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が発生した理由は、以下の通り。①86,030円(その他費用)、国際学術シンポジウム報告のための参加費(the 8th Solar Integration Workshop での発表)、2018年10月16日、スウェーデンで開催。②7,082円(物品費)、上記の国際学会の過年度の報告論文集の購入(the solar Integration Workshop の2016年と2017年の論文集の購入)。 今年度の費用は、科研費最終年度の研究に使用する。Solar Integration Workshop (アイルランドでの開催)への参加費、飛行機代、宿泊費に使用する。風力エネルギー利用シンポジウムへの参加費用(東京)、環境経済政策学会での報告(福島県で開催)のための旅費、宿泊費に使用する。DigSilent Power Factory のソフトの習熟のため、ドイツの研究者との交流を行う。Matlabによる発電機起動停止―経済運用のモデルの改良のため、研究会を開催するため、会議費および東京への出張費に使用する。これらは、当初の研究計画の通りで、特段の変更はない。
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