研究課題/領域番号 |
17K00714
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
亀川 徹 東京藝術大学, 音楽学部, 教授 (70359686)
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研究分担者 |
丸井 淳史 東京藝術大学, 音楽学部, 准教授 (90447516)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アップミックス / インパルス応答 |
研究実績の概要 |
本研究は,音楽を未来に伝えるアーカイブ化において,その演奏がおこなわれた空間の音響も含めて臨場感のあるコンテンツとして制作,記録していく手法について検討をおこなう。音楽そのものを記録するだけではなく,音楽が演奏される空間の音響そのものも含めて臨場感のある音楽としてアーカイブ化することは,未来に音楽文化を残していく上で重要なテーマである。本研究では,DNNを用いた残響除去技術を応用して,収録された直接音と間接音から空間のインパルス応答を推定する手法を開発する事で,音楽コンテンツをより臨場感のある音で,かつなるべく低容量のデータによって記録し,優れた音響空間を未来に残していくためのアーカイブ手法を提案することを目的とする。 1年目は本学の上野校地の奏楽堂(コンサートホール)および千住キャンパスのスタジオA(床面積160の音楽スタジオ)において22.2チャンネルのための収音方式の検討をおこなった。また本学千住キャンパスにある22.2マルチチャンネル音響システムを用い,収音方法の比較をおこなった。奏楽堂のインパルス応答は、NHKとの共同で2014年に測定したデータを使用することができた。これらを用いて位相をランダム化してアップミックスする手法を検討して、聴取実験をおこなった。 また千住校地のスタジオAにおいて、スペースドアレイ(22本のマイクロホンの間隔を開けて設置)、超指向性マイクロホン24本によるハリネズミ方式。そして1次のAmbisonicsのマイクロホンを用いて、バイオリンのソロの録音をおこなった。これらの録音については、2年目に聴取実験のサンプルとして使用する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、22チャンネルのインパルス応答と、9チャンネル,5チャンネルのインパルス応答から位相をランダム化してアップミックスしたインパルス応答を用いて、空間印象がどのように変るかについて、類似度を比較する聴取実験をおこなった。その結果、インパルス応答の初期部分と後期部分を分けて処理することで、オリジナルの22チャンネルに近い空間印象が得られる可能性が示唆された。これらの実験結果は、10月に行われたAES(オーディオ技術学会)コンベンションで発表した。
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今後の研究の推進方策 |
当初、DNNを用いた残響除去技術を応用して,収録された直接音と間接音から空間のインパルス応答を推定する手法の開発を検討していたが、実際の音楽コンテンツに応用するにはまだ十分な学習データが得られていないなどの課題があることが判明した。平成30年度は、さらに調査をすすめ、より実現可能な方策を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度の実験実施のために、次年度購入機材予定機材の一部が必要となったため購入した。
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