本研究は,音楽を未来に伝えるアーカイブ化において、その演奏がおこなわれた空間の音響も含めて臨場感のあるコンテンツとして制作,記録していく手法について検討をおこなうことを目的に実施した。 1年目は本学の奏楽堂およびスタジオにおいて測定した22.2チャンネルのインパルス応答を用いて、22.2マルチチャンネル音響の収音方式の比較をおこなった。 2年目は千住校地のスタジオAにおいて収録した、スペースドアレイ(22本のマイクロホンの間隔を開けて設置)、超指向性マイクロホン24本によるハリネズミ方式、そして1次のアンビソニックスによって収録したヴァイオリンのソロの録音を用いて、これらの録音方法の印象について聴取位置の違いも含めて聴取実験をおこなった。 3年目は前年度の聴取実験から得られた結果と対応する音響特徴量について調査をおこなった。その結果側方や上下方向からの反射音の特定の周波数が3Dオーディオの空間印象に寄与していることが示唆された。またこれらの調査結果をまとめてAES(Audio Engineering Society)での発表や、論文投稿の準備をおこなった。 最終年度は、これまでの成果を次の研究テーマにつなげるために、アンビソニックスとチャンネルベースの比較や、3Dオーディオの上層の周波数特性の影響についての調査も実施し、アーカイブ制作のためのデータ圧縮収音の検討の端緒が得られた。 本研究で得られた立体音響の収録技術についての知見は、音楽が演奏される空間の音響そのものも含めて臨場感のある音としてとしてアーカイブ化することで、未来に音楽文化を残していくために大いに役立つことが期待される。
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