本研究では、ユニバーサルミュージアムを、年齢、性別、国籍、障がいの有無等をこえて多様な来館者の包摂が実現された博物館と定義する。その視点から国内外の複数の博物館を横断的に調査し、ユニバーサルミュージアムの課題とその解決策を明らかにすることを目的とする。期間を通じて、視覚以外の知覚鑑賞を可能とする展示手法を構築する「知覚鑑賞」、多様な来館者と博物館(学芸員・研究者)の間に存在するギャップや親和性に着目した「双方向性」、博物館が自己点検や社会に向けた提案を実施していく「社会性」の3つの視点で研究を進めた。 一つ目の知覚鑑賞については、案内装置の特許をもとに実装化を進めた「デジタル触地図」の開発を国立民族学博物館とのプロジェクトで課題調査から社会実装まで行なった。二つ目の「双方向性」については、「ミュージアム・コミュニケーションと教育活動」を出版し、来館者、ユニバーサルデザイン研究者・専門家と博物館スタッフ・研究者の「ズレ」を可視化し、双方向性を確認するユニバーサルミュージアムマトリクスの開発を進めた。三つ目の「社会性」については、国内外の博物館関係者との研究交流を行なった。 今年度の研究成果として、日本デザイン学会 デザイン学研究作品集26号に審査通過し採録された『国立民族学博物館触知案内板のデザイン開発』が日本デザイン学会2021年度年間作品賞」を受賞した。 それらの成果発表はコロナ禍の影響により延期となっていたが、今年度を最終年度として2023年1月27日に「ユニバーサルミュージアムデザインシンポジウム」と題して国際デザインシンポジウムを開催した。フィンランド・ユーレカ科学館の研究者を招き、国立民族学博物館、九州国立博物館、山口大学などの国内研究者とともに、それぞれのユニバーサルミュージアムの取り組みについて発表を行い,研究交流を行った。
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