本研究は、日本の製品・サービスが海外展開において、現地市場への適応のためにどのようなローカライズが要求されるのかを検討している。嗜好の特殊性が強い新興国への展開においては、法令、慣習、宗教、気候条件などを考慮して、デザインのローカライズが不可欠であると考えられている。 しかしながら、どの項目をどの程度変容させるべきかという点でのコンセンサスは得られておらず、各社とも新製品を投入する度に大きなコストが生じている。 このような状況を踏まえて、本研究では市場拡大のポテンシャルが高く、既に日系企業の進出が盛んな東南アジアをフィールドとし、1.既進出企業によるローカライズ経験蓄積の体系化、2.各国の消費者ニーズの相違点の抽出を試みている。 消費者ニーズ の相違点に関しては、最終年度の成果として全期間中に実査を完了したミャンマー、ラオス、ベトナム、タイ、インドネシアにおける消費差行動に関するアンケート調査結果を横断的にまとめた。ここでは、5カ国の市場の相違点を主成分分析、コンジョイント分析によって表現したが、5市場の特性が明らかとなり、よく言われる「東南アジアは1つの市場と捉えてよい」という考えとは異なる解を導いた。また、フォーカス・グループ・インタビュー(FGI)を通じた分析では、特に大学生を対象としたことから、寮生活やアルバイトの可否などが各国の消費者行動を定義づけていることがわかり、今後学生らの特徴的なライフスタイルを踏まえたマーケティング戦略策定に活かせる知見を得ることができた。 また、本研究では、ミャンマーにおいて研究室が推進してきた無煙クッキングストーブ普及プロジェクトを活かして、「BOPプロダクトの商品企画・開発手法の確立」にも取り組むことができた。ここでは、より精緻な製品ローカライズのためのField Based Developmentという手法をコンセプト化した。
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