研究課題/領域番号 |
17K00724
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
渡邉 英徳 首都大学東京, システムデザイン研究科, 准教授 (00514085)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 人工知能 / 写真 / デジタルアーカイブ / ソーシャルメディア / マスメディア |
研究実績の概要 |
これまでのデジタルアース・アーカイブの研究成果を活かして,インド洋大津波のデータ,企業ビッグデータのデジタルアーカイブを作成し,公開した。 加えて,ニューラルネットワークを用いた自動色付け技術を用いて,マスメディア(朝日新聞社,沖縄タイムス,岩手日報社)の所蔵する災害アーカイブなどの資料をカラー化し,取材・時代考証を踏まえた補正を加えたものを,ソーシャルメディア(Twitter,Facebook)で発信する実験を行なった。毎日,その日付に起きた出来事にまつわる画像をアーカイブから選定し,カラー化したものを発信した。各々の着彩写真は数千〜数百回リツイート・シェアされ,年度内のインプレッション数は合計6000万回となった。 カラー化写真に対して,ユーザからは多数のリプライ・引用リツイートがあり,写真への感想,時代考証,撮影地の特定など,さまざまなコミュニケーションが創発した。その結果,写真の撮影地や被写体の詳細が判明するなど,資料内容の特定への寄与もみられた。さらに,カラー化した写真をもとにして,若者たちと災害の当事者が語り合い,交流を深めるワークショップを,広島原爆・東日本大震災をテーマとして開催した。このことにより,ローカルなコミュニティ形成に貢献した。 カラー化写真およびワークショップは,朝日新聞朝刊一面(6/23)をはじめとするTV・新聞などのマスメディアで多数取り上げられ,年度内に34件の報道があった。こうした反響を受け,カラー化した写真を,日本新聞協会主催の展覧会「よみがえる沖縄1935」などで展示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ニューラルネットワークによる自動色付け技術を応用することにより,過去の災害資料に対する人々の関心を引きつけるメソッドを確立することができ,マスメディア・ソーシャルメディア・ワークショップ・展示会などに発展した。この成果は,研究目的である「マス・ソーシャルメディアと災害デジタルアーカイブのインテグレーション」に直結するものであり,当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
1. 現状のメソッドを用いて,過去の災害資料のカラー化を進め,マス・ソーシャルメディアでの発信を継続する。 2. ワークショップと展示会を実施し,バーティカルな情報発信と,ローカルなコミュニティ形成を試みる。3. 没入型ディスプレイシステムを用いた,デジタルアース・アーカイブとの統合を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用技術をテキストの機械学習からニューラルネットワークによる自動色付けに切り替えたため,サーバ使用料,機械学習サービス使用料を節約することができた。同様に,補助員が不要になったため,人件費を節約できた。次年度は,今年度利用した費目に加え,ワークショップ開催のための人件費が必要になるため,そちらに充当する予定である。
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