研究課題/領域番号 |
17K00728
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研究機関 | 長崎県立大学 |
研究代表者 |
金谷 一朗 長崎県立大学, 情報システム学部, 教授 (50314555)
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研究分担者 |
山本 景子 京都工芸繊維大学, 情報工学・人間科学系, 助教 (10585756)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | デザイン / 拡張現実感 / ヒューマンインタフェース / コンピュータ支援設計 |
研究実績の概要 |
多くの工業製品が成熟化した現在,工業デザインにおける造形デザインの重要性はますます高まっている.しかし,計算機支援設計(CAD)が前提である生産システムでは,デザイナが製品コンセプトと印象に基づいて描く造形デザインは一旦CADシステム向けにパラメタ化されるが,この過程で造形デザインの印象,造形デザイナが描いた印象をそのまま工業製品として意匠化し生産できている例は少ない. 本研究提案者らは,原田らの先駆的な研究[1]に基づきドローイング,デザイン定規,造形の優れた自動車の形状の印象による分類を行い,代表的な二つの造形デザインクラスすなわち「たまり」と「きれ」の2クラスを発見した. 静的な造形デザインを構成する個々の曲線,曲面に還元したとき,個々の曲線,曲面の印象はそれぞれの「曲がり具合の味わい」と「ボリューム感」で言い尽くされることが従来発見されており,本研究提案者らは曲線,曲面の「曲がり具合の味わい」は前述の「たまりのある」印象と「きれのある」印象にやはり分類できることを発見した.ただし,曲面の「ボリューム感」は対象物の実在感に大きく依存し,紙や平面スクリーンはもちろん,立体表示ディスプレイ装置を用いても提示は困難であることがわかった. 本研究提案者らはこれまでにデザイン曲線の作風ごとの微分幾何学的特徴を抽出することに成功し,この特徴量を利用した感性的曲線ドローイングツールを開発し,またこれらの知見をデザイン幾何学としてまとめ,デザイナに高く評価された.また現在普及しつつある3Dプリンタ技術と複合現実感技術を融合させ,デザイン印象を動的に変化させ,かつその変化を3次元計算機支援設計(CAD)システムへとフィードバックするシステムの開発にも成功した. [1] 原田利宣他: 曲線の性質に関する定量化研究; デザイン学研究, 40, 6, pp.9-16, 1994.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は概ね順調に進展している. 本研究は機械学習アルゴリズムを用いるが,機械学習アルゴリズムのオープンソースライブラリが急速に充実してきたため,機械学習アルゴリズムの独自実装部分を縮小することができ,他の要因による研究時間の減少をカバーできた.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策は,デザイン事例に関する大量のデータを取得し,前処理を行ったあと機械学習アルゴリズムによって学習させ,造形デザイン感性モデルの構築と検証を行う. 実装した造形デザイン感性の微分幾何学モデルがどの程度普遍性があるのかを調べるため,下記の試験を行う. * 提案数学モデルを実装したCADシステムの工業デザイナによる主観評価 * 提案数学モデルによる自動生成した意匠曲面の一般ユーザによる印象の統計調査 また,既存の工業製品,彫刻,建築などのうち美術的評価の高いものを選び,3次元形状計測装置を用いてそれらの形状を取得し,それらの印象と提案モデルとの一致度を探り,将来のディジタルアーカイブ応用の基礎データとする.
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