研究課題/領域番号 |
17K00730
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
藤本 貴之 東洋大学, 総合情報学部, 教授 (20373053)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | デザイン / パクリ / ネット炎上 / 知的財産権 / デジタルデザイン / アプリケーションデザイン / 実感するデザイン / アナログ的デザイン |
研究実績の概要 |
研究期間初年度である2017年度は、デジタルデザイン、アプリケーションデザイン分野における「パクられづらいデザイン」のあり方を、実際のデザイン制作およびアプリケーション開発等を通して検討した。パクリという現象やその発生要因を明らかにするためには、まず、実際のデザインや設計・制作作業を通じて理解してゆかなければならない。本研究課題で重要視していることは、単なる批評や第三者的な分析ではなく、製作者・開発者の側から、実際のデザインや制作の作業を通して、パクリの発生要因を理解し、分析してゆくことにある。よって、本研究課題は、実際のデザイン制作作業を行いつつ、その作業工程および成果物自体を被験体として分析してゆくという、制作と分析の両輪によって行うことを特徴としている。2017年度は、実際のデザイン・制作によって作り出した複数のデジタルデザイン(コンテンツ)やアプリケーションを事例として、「パクリやすいデザイン」「パクられづらいデザイン」について分析した。2017年度の研究成果から明らかになったことは、デジタルデザイン時代の今日、「パクられづらいデザイン」とは、意匠の複雑さや難解なプログラム技術というよりも、むしろ利用者や享受者に対しての「アナログ的な実感」の有無にあるのではないか、ということである。例えば、いかに複雑なCGであっても、その表現や技術はソフトウェアや環境の進化によって容易に模倣可能となる。しかし、アナログ的な実感を伴うデザインとは、表面的なデザインを超えた部分にオリジナリティがある。それが「パクりづらいデザイン」へと繋がるのではないか。研究期間2年目となる2018年度は、これまでの研究成果を踏まえ、より実践的且つ具体的な「パクられないデザイン」「パクリを抑止するデザイン」について実作業を通して分析し、2017年度に立てた仮説を検証しつつ、明らかにしてゆきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
デザインにおけるパクリの発生要因を明らかにし、そこから、その抑止手法について検討するという本研究課題は、幅広い分野の知見と情報、および実際のデザイン作業とその分析が求められる。研究期間初年度である2017年度では、第一段階のデザイン実作業とその分析を通して、デジタルデザイン時代の「パクりづらいデザイン」について、順調に研究を進めることができ、研究を発展させるための多くの知見とヒントを得ることができた。当初予定していた進捗に対して、問題なく成果をあげることができており、研究期間2年目の2018年度への取り組みへも順調に接続をしている。2017年度の成果としては、国際会議では、7th International Conference on Innovative practices in Business, Social Sciences and Humanities research(UAE)、25th International Conference on Systems Engineering(USA)など、4th International Conference on Computational Science/ Intelligence & Applied Infomatics(日本)、国内学会では、情報処理学会 第130回情報基礎とアクセス技術・第108回ドキュメントコミュニケーション合同研究発表会などで、複数の論文発表を行った。また、本研究に関わる学術賞も受賞することができた。
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今後の研究の推進方策 |
実際のデザインや設計・開発などの実作業から、その分析を通してデジタルデザイン時代の「パクリ」の発生要因を明らかにし、その抑止手法を示すことが本研究の中心的なテーマである。2017年度は、第一段階としての成果を順調に出すことができたので、研究期間2年目の2018年度では、その研究成果を継承しつつ、より具体的且つ細かいレベルでの分析を行いたい。特に、「パクられづらいデザイン」「パクリを抑止するデザイン」については、「実感」をキーワードにしたデザイン手法ないしデザインのあり方を提唱し、それを具体的な方法論として示してゆく予定である。また、複数の国際学会、国内会議および国際論文誌などでの論文投稿も予定している。特に、2018年7月に開催される国際会議「1st International Conference on Interaction Design and Digital Creation / Computing (IDDC 2018)」は、本研究課題をテーマとして組み込んだSpecial Sessionの開催を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額として生じた「36,673円」は、当初、次年度(2018年度)の7月、8月に開催される国際会議の論文の英文校閲に利用する予定であった。しかし、当該学会の論文〆切が、3月30日から4月上旬へと延長された。これに伴い、投稿〆切までの猶予が発生したため、論文の信頼性を高めるための再精査を行うこととした。その結果、英文校閲を依頼する日程も次年度4月へとずれてしまった。よって、次年度使用額として生じた「36,673円」は、論文〆切に合わせ、2018年度4月に使用することとなった。
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