研究課題/領域番号 |
17K00733
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研究機関 | 武蔵野美術大学 |
研究代表者 |
高山 穣 武蔵野美術大学, 造形学部, 准教授 (50571907)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | CG / L-system / 切子 / 装飾 / グラフィックス |
研究実績の概要 |
本研究年度においては、前研究年度からの継続として、L-systemによる装飾表現に引き続き取り組んだ。なお、L-systemは文字列の変換ルールを定義することでデータを生成し、それを図形に置き換えることで複雑な形状表現が可能となる技法であり、樹木のCG表現などに多用される。前研究年度においては日本の伝統的な木工細工である組子の表現に取り組んだが、本研究年度においては日本の伝統的なカットグラスである切子の装飾文様のアルゴリズム化に取り組んだ。切子はその加工の特性上、ほとんどが直線を基調とした文様であり、文様同士の重なりによる遮蔽も考慮する必要がないため、手作業でも作図することは特に難しくない。しかし、L-systemにおいて文様の生成過程も記述することで、様々なコンテンツ応用が可能と考えた。そこで、江戸切子・薩摩切子においてよく使用される代表的なパターンをいくつか選出し、文献調査等によって様式を把握したうえでL-systemを用いて記述を行った。その結果、いずれの文様もわずか数行の変換ルールの記述によって表現できることが判明し、なおかつ出力された文様はいずれも伝統的に正確なものであることが確認できた。さらに、文様が成長していく様子もL-systemによって表現できることから、ルールを組み替えることで、職人が加工を施すプロセスも理論的に表現可能なことが確認できた。これは将来的に、デジタルアーカイブなどへの応用も期待できる。 以上の成果を国際会議において発表し、同大会において技術面が評価され表彰を受けた。なお、本研究年度で得られた切子の表現に加え、前研究年度の組子の表現を組み合わせ、審美的なCGアニメーション作品を制作した。同作品は国内の公募展で最高賞に選ばれるなど、造形面でも本研究の取り組みが高く評価を受けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題で取り上げた伝統装飾のアルゴリズム化は、その審美性・新規性について、学会のみならず美術系公募展においても高い評価を受けていることから、順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究年度までの成果を受けて、同様のアプローチをさらに他の装飾文様へ応用できないか試みる。また、今後は伝統文様の視覚的な正確性に留まらず、その加工プロセスまでも忠実に再現するためにアルゴリズムの高度化を目指すとともに、実体物として造形出力することも視野に入れた装飾生成アルゴリズムの応用性について検討することを試みる。以上の項目に加え、SIGGRAPH、SIGGRAPH Asia、Ars Electronica、South by Southwest等の関連する学会・大会の視察も検討し、研究の遂行に必要な資料収集を行うと同時に、得られた成果については国内外での発表を目指す。具体的発表形態は学会発表や論文執筆等に加え、発表予定の関連学会に併設されるアート系公募展等での審美的造形物としての発表も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
やむを得ない事情により、視察を予定していた学会に参加ができなかったため残額が生じている。この残額は、研究内容の進展の都合に応じて使用計画の優先順位を再検討した結果、研究課題に必要な演算機器類やソフトウェア等の購入に充てるため次年度使用としたい。
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備考 |
The 16th International Conference of Asia Digital Art and Designにおける研究発表について、学会賞「Best Technical Paper」を受賞した。 また、2018アジアデジタルアート大賞展FUKUOKAにおいて、本研究課題に関連したアニメーション作品がアジアデジタルアート大賞(最優秀賞)、福岡県知事賞、文部科学大臣賞を受賞した。
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