本研究年度における実施内容は、主にこれまでの成果の集約とさらなる応用性について考察するものであり、具体的内容は以下の通りである。 まず、前研究年度までの技法のさらなる高度化を試みた。既に前研究年度においてL-systemを応用して切子や組子に見られる実在の伝統装飾を生成することに成功していたが、そのルール記述において恣意的な定数を一部で用いるなどの問題点もあった。それらの問題点は出力結果における装飾様式との整合性に大きな影響を及ぼさないものの、汎用的な装飾生成技法としての応用性を考慮すると解決することが好ましい。そこで本研究年度においてはL-systemの記述法に改善を加えるとともに、併せてより多様な文様表現も試みた。 さらなる展開として、光造形方式の3Dプリンタを用いた装飾オブジェクトの立体出力も試み、本研究課題の技法によって得られた装飾形状を現実空間に応用可能かどうか検討を行った。特に本研究課題の技法を用いることで、現実の工芸制作においては加工プロセスの制約によって実現不可能となる装飾部材も出力できることから、デジタル造形技術のみで実現できる装飾の展開を探った。 なお、前研究年度において制作を行った審美的なCGアニメーション作品については、本研究年度において品質のさらなる向上を試みた。具体的にはより高度なレンダリング環境を用いて解像度の向上と画質の改善を試みたほか、細部の修正・調整を行った。同作品は国内外のイベントや公募展への応募を試み、結果として著名な国際会議の映像作品上映プログラムに採択されるなど高く評価を受けた。
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