研究課題/領域番号 |
17K00735
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研究機関 | 金城学院大学 |
研究代表者 |
遠藤 潤一 金城学院大学, 国際情報学部, 准教授 (60461274)
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研究分担者 |
定国 伸吾 静岡理工科大学, 情報学部, 准教授 (00454348)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ディストラクション / プリパレーション / プロジェクション / 映像コンテンツ / 小児医療 |
研究実績の概要 |
あいち小児保健医療総合センターとの共同研究により,病院内の環境を改善するために, 壁面や天井にプロジェクタで投影する映像コンテンツやツールを開発する。患者である子ども(特に未就学児)は治療行為にたいする技術的な理解が難しく,また自分の気持ちや意見を正確に表現することが難しい。手術室や処置室,病院そのものにも恐怖感を持ちやすいため,プリパレーションやディストラクションの考えを用いて,これらの恐怖感を緩和することが必要である。 平成30年度は精神・神経科病棟の処置室と病棟廊下の2ヶ所を対象として,映像コンテンツの試作と必要な環境整備を提案した。処置室では,子どもが数分~数十分の処置を受ける間に,気を紛らわせたり,落ち着かせたりする必要がある。バッテリー内蔵型モバイルプロジェクタを用いて,壁面や天井,床面の必要な場所に映像を投影するためのコンテンツを試作した。試作コンテンツについて,保育士など現場スタッフからのヒアリングを行い,コンテンツの改善と今後の展開の方向性を確認した。病棟廊下向けには,病棟の環境,入院している子どもの状況などを確認した。入院中は外に出かけることが困難なため,病室に対して廊下を外と見立てて,体を動かすリハビリテーションの場と自然を感じる場と捉えてコンテンツを検討した。具体的には廊下のあちこちに設置したQRコードを探す仕組みや子どもが描いた絵をスキャナで読み込むと廊下の別場所に絵が表示される仕組みなどである。 また,大型プロジェクタを用いたイベント向けのプロジェクションマッピングを行った。平成29年度には外光の入る病院アトリウムで実施したが,平成30年度は外光の入らない大きな会議室内と病院アトリウムの2ヶ所で行った。場所の違いによる見やすさへの影響やインタラクションの有無による違いなどについて比較,確認を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では平成30年度は運用を考えたパッケージ化を行う予定としていたが,年度内にパッケージ化を完了させることができていない。 処置室向けについては,映像コンテンツに関する調整と試作に時間がかかったことが原因である。関連する研究や先行研究について文献を収集して調査を行ったが,医療現場の環境改善に映像コンテンツやプロジェクタを用いた例が少なく,直接参考となる資料が少なかった。そのため,映像コンテンツの試作において,内容やバリエーションの絞り込みに時間がかかった。現場スタッフにたいしてヒアリングを行ったことで,コンテンツの方向性を確認することはできた。なお,パッケージ化のためのハードウエアの選定やアプリケーション基本仕様など技術的な見通しはついているため,遅れの回復は可能であると考えている。廊下向けについては,センター側の都合により令和元年内には行われなくなった。そのため,今後は処置室向けの作業に集中する。 大型プロジェクタを用いたイベント向けのプロジェクションマッピングについては,予定通り実施することができた。評価内容について分析を行い,令和元年度の実施内容に反映させる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度に予定していたパッケージ化に向けた作業を進める。具体的なパッケージ化の内容としては,タブレット端末上で動くアプリケーション(iOS対応を予定)を想定している。現場で使いやすくするために,試作アプリケーションによる実証実験を行いながら,開発を進めていく予定である。ハードウエア面について,現在は市販品の組み合わせを用いているが,これらの現場での性能や使い勝手についても評価を行う。結果の公表についても評価が得られた段階で積極的に進めていく。
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