小児医療病棟におけるディストラクションとして,プロジェクションマッピングを用いたコンテンツとツールを開発している。ディストラクションとは,プレパレーションの一種として行われ,処置中の恐怖感を軽減したり気をそらしたりするものである。小児医療の現場では,処置中に打楽器や光を発するおもちゃ,ぬいぐるみなどを駆使して対応している。 2019年度はあいち小児保健医療総合センターに新たに開設された病棟を対象にディストラクションツールの開発を行った。新病棟は脳神経外科・神経科で,子どもの年齢や発達段階もさまざまである。病棟内の処置室では,採血,点滴などの処置が行われ処置の時間は長くかかる。その間,子どもたちは処置室の中でじっとして過ごすことになる。そこで,デジタルツールによるディストラクションが有効であると考えた。 本研究ではこれまでのセンターとの共同研究を応用し,処置室内に映像を投影する仕組みを導入した。ツールとしてタブレット端末と小型軽量なモバイルプロジェクタを組み合わせて,処置室内の天井や壁面に自由に投影できるようにした。また,タブレット端末向けに映像コンテンツの再生アプリケーションを開発した。 2019年6月から処置室での運用を開始し,ディストラクションの新たな取り組みを示すことができた。また,技術面や運用面からの課題を抽出することができた。課題については今後の改良に活かしていく。 また,本研究の応用開発として,掛川市のクリニックの待合室にプロジェクションマッピングを用いたシステムを導入し2019年5月から常設運用している。
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