研究課題/領域番号 |
17K00744
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研究機関 | 久留米工業大学 |
研究代表者 |
東 大輔 久留米工業大学, 工学部, 教授 (20461543)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 航空機デザイン / 飛行安定性 / 地面効果 / 離島交通 / 海洋交通 / 航空サービス |
研究実績の概要 |
地面効果翼の課題は、海面近傍を飛行する際に外乱による姿勢変化で翼端もしくは期待後方が着水し、飛行不可能な状況に陥ることであり、2019年度は微小な姿勢変化を敏感に捉えて姿勢変化を抑える翼上面の境界層制御装置を行ったが、従来の垂直尾翼ほどの飛行安定性を高める効果を得ることはできなかった。そこで、2020年度はヨー方向の飛行安定性を高める垂直尾翼を機体前方に配置し、水平尾翼も合わせて前方に配する固定型空力デバイスの検討を行い、次世代航空機として十分に斬新な印象が得られる機体デザインとしながら巡航時の飛行安定性を高める固定型空力デバイスの提案を行うことができた。前方に設置する固定翼のため、高迎角時のリヤエッジの着水を避けることもできる。 このように、次世代の地面効果翼機として機能とデザインを融合する重要な方向性を見出せたため、2021年度は地面効果翼機を用いた交通サービスの市場分析に着手。沖縄および鹿児島、長崎五島などの離島における交通サービスの現状を調査した。離島間の交通需要は通院、通勤、買出し、通学などがあるが、特に高齢者の通院には大きな課題がある。例えば、沖縄には多数の離島があるが、空港があるのは限られた大きな島のみで、その他の島の島民は船で大きな島の病院に通院している。病気の高齢者にとって、半日近く船で揺られる移動の身体への負担は極めて大きい。現地の調査でも、空港がなくても利用可能な地面効果翼機に対して大きな期待を寄せる声が多数聞かれた。2022年度は、可能であれば海外も含めた離島における交通状況の調査を継続しつつ地面効果翼機を用いた交通サービスの事業性評価も行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本来ならば2020年度には飛行安定性に優れる地面効果翼機のデザイン提案と、それを用いた新たな交通サービスの検討を終えている予定だった。デザイン提案については、コロナ禍でありながら研究室の学生らが着実に研究を進めてくれたおかげで、次世代の地面効果翼機としての斬新な意匠と、優れた飛行安定性を融合したデザインの方向性を示すことができたが、それを用いた交通サービスの検討は遅れていると言わざるを得ない。サービスの検討には現地の実情調査と、現地住民の声を調査するフィールドワークが重要になるが、コロナ禍で思うように進められなかったのが「遅れている」と区分した理由である。ただ、2021年度は、国内の沖縄、鹿児島方面、長崎などの離島の調査を行うことができ、空港が設置できない小さな島でも高速かつ揺れの少ない地面効果翼機のサービスを望む現地の切実な想いなどを聞き、市場調査を着実に進めることができた。海外の調査においては未実施のままであり、2022年度も実施の可能性は厳しい状況であるが、コロナの状況を見つつ、場合によっては国内調査を深める取り組みを進めるなどして、地面効果翼機を用いた新たな交通サービスの事業性検討なども進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
コロナで海外調査が実施できておらず、研究期間の延長を認めていただいてきたが、2022年度こそは海外調査を実施し、離島における新たな交通手段の調査や、住民への浸透性、サービスの事業性などについて調査を行い、国内での地面効果翼機による新たな交通サービスの提案や事業性評価に活かしたい。 仮に、2022年度もコロナが猛威を振るい、海外調査が実施できなかった場合は、風洞試験やコンピュータシミュレーションなどを用いて飛行安定性に優れる地面効果翼機のデザイン研究をより深めるとともに、現地住民や自治体への調査を実施しつつ国内の離島交通調査もさらに深め、地面効果翼機を用いた新たな交通サービスの市場分析と事業性評価を行い、最終報告書をまとめたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度もコロナの影響で海外調査が行えず、次年度使用額が生じてしまった。2022年度はコロナの状況を見つつ、海外調査を実施したいと考えている。仮に2022年度も海外調査が厳しい状況になってしまった際は、国内調査による市場調査とサービスの事業性評価を進めるとともに、風洞試験やコンピュータシミュレーションなどを用いて地面効果翼のデザイン研究をより深める予定である。
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