(1)次世代地面効果翼機のデザイン提案 これまでの検討から、機体デザインに求められる技術要件を大きく2つにまとめた。一つは飛行安定性に優れること。すなわち、飛行中のピッチングモーメントやヨーイングモーメントの安定性を高めることである。そしてもう一つが低速飛行時の揚力確保である。前者は風洞試験による空力調査で機体前方に取り付ける先尾翼が有効であることを見出し、次世代航空機らしい先鋭的なデザインと空力性能を両立するデザインの方向性を示すことができた。もう一つの技術要件である低速飛行時の揚力確保については、機体が発生する揚力を水中翼で補うアイデアを提案し、低速飛行時の揚力不足を解消するとともに、ピッチングモーメントなどの飛行姿勢の安定化も可能にする新たな機体デザインの提案を行った。 (2)ビジネスモデルの検討 地面効果が有効に得られるのは地面や海面の近傍であるため、地面効果翼機が活躍するのは波の穏やかな湾や入り江を想定していたが、次世代の小型航空機の活用が求められるシーンの市場調査を行ったところ、沖縄や鹿児島などに点在する空港のない離島間の移動に強いニーズがあることが分かった。空港のない離島間の交通は船舶に頼るしかないが高齢者が通院で病院のある島まで船で揺られていくのは身体的かつ精神的に大きな負担がある。地面効果翼ならば移動時間を大幅に減らせ、空港も不要のため、サービスの実現を期待する声が多かった。また、湾内の海洋交通が発達しているシドニーで学術機関や政府機関と協議したところ、海上の高速移動だけでなく、広大な平野の移動にも活用できるという大陸ならではの有益な助言を得た。電動で飛行するエアタクシーよりも航続距離が長いという特徴にも興味を示され、国内だけでなく、海外にも市場を広げる可能性を見出した。
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