研究課題/領域番号 |
17K00746
|
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
渋沢 進 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 名誉教授 (20110398)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 高齢者の動作と状態の推定 / 環境・装着・生理センサ / 深度画像センサ / 複数センサのデータ処理 / インタラクション支援システム / 赤外線画像認識 / 非同期データ転送 / 高齢者ヘルスケア |
研究実績の概要 |
本研究では、複数の種類のセンサと入力機器より構成されるセンサネットワークを用いて、高齢者の動作を検出し、状態を推定し、出力機器を通して高齢者に働きかけるアクティブインタラクションシステムを開発するとともに、その基礎となる先進的ユビキタスネットワークの基盤技術を開拓することを目的としている。平成30年度は、これまで開発したインタラクション支援システムの成果を整理するとともに、複数の種類のセンサデータの収集と統合、保存、及び高齢者への働きかけを行うプロトタイプの作成を目標とした。 その結果、平成30年度は、深度画像センサを用いた拮抗体操支援システムとユーザ位置を識別するテーブルトップシステムの成果の整理、環境センサを用いたセンサデータの収集、センサネットワークシステムのデータ転送操作の研究を行った。 深度画像センサを用いた拮抗体操支援システムに関しては、これまでシステムを開発し、高齢者による評価実験を行ったので、平成30年度は高齢者の評価実験結果を整理し、研究論文として発表した。また、複数ユーザが協調作業する環境として、これまでユーザ位置を識別するテーブルトップシステムを開発し、性能評価してきた。平成30年度は、本システムの新規性を明確にし、研究成果を整理し研究論文として発表した。 環境センサを用いたデータ収集に関しては、7種類の環境情報を取得できる環境センサと小型コンピュータRaspberry Piのシステム設定を行い、Bluetoothを通して環境センサの取得したデータを小型コンピュータで受信し格納した。センサネットワークシステムのデータ転送操作に関しては、非同期データ転送の考え方を導入して、各種条件下でのデータ転送時間を他のデータ転送法と比較した。また、重み付きグラフの線形木表現を導入し、いくつかのグラフに対して非同期データ転送の転送時間を求めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の研究協力者の他研究教育機関への移動、研究代表者と協力者の研究環境の変化等により、これまで蓄積してきた研究結果を整理して論文化するとともに、進展の期待できるユビキタスネットワークの基盤研究に注力している。高齢者インタラクションシステムの開発については、成果の期待できる内容を検討している。 1.ユビキタスネットワークの基盤研究: (1)ユーザ位置を識別するテーブルトップシステム: 赤外線画像認識によってユーザ位置を識別するテーブルトップシステムの関連研究を調査し、研究の新規性を明確にし、研究成果を整理し、研究論文として公表した。 (2)センサネットワークシステムのデータ転送操作: 多数のセンサから収集される多量のデータに対して、効率的なデータ転送と処理の方式を検討した。非同期データ転送の概念を導入し、様々な条件下でのデータ転送時間を求め、他のデータ転送と比較した。また、重み付きグラフの線形木表現を導入し、いくつかのグラフに対して非同期データ転送時間を求めた。 2.高齢者インタラクションシステムの基礎的研究: 深度画像センサを用いた拮抗体操支援システムについて、高齢者による評価実験結果を整理し、研究論文発表を行った。また、環境センサと小型コンピュータのシステム設定を行い、環境センサの取得したデータを小型コンピュータで受信し格納した。この課題の一部については、研究状況の変化を勘案して、成果の期待できる課題に集中してきた。 3.高齢者のアクティブインタラクションシステムの開発と実験: 本研究は、センサデータから高齢者の動作と状態を推定し、出力機器を通して高齢者にアクティブに働きかけることを目指している。この課題については、研究状況の変化を勘案して、成果の期待できる課題を検討してきた。
|
今後の研究の推進方策 |
研究状況の変化等により、研究スケジュールを見直し、他研究者への研究協力の要請とプログラミング技術者による技術支援によって研究を進める。特に、進展の期待できるユビキタスネットワークの基盤研究に注力していく。高齢者インタラクションシステムについては、研究状況を勘案しながら研究を進める。 1.ユビキタスネットワークの基盤研究: センサネットワークシステムの効率的なデータ転送と処理の方式を開発する。様々な条件下での非同期データ転送時間を求め、他のデータ転送と比較する。また、シミュレーションによって重み付きグラフの非同期データ転送を性能評価する。グラフのシミュレーション実験には、プログラミング技術者からの技術支援を受ける。 2.高齢者インタラクションシステムの基礎的研究: 多数のセンサより成るネットワークシステムについて、データの同期、整合性、収集、集計、選択、保存などのデータ処理に関する基礎的研究を検討する。次のような課題については、研究協力者の状況を勘案しながら研究を進める。 (a)複数の種類のセンサデータの処理に関する実際的研究 (b)センサデータから人の動作を推定する実際的研究 (c)センサデータから人へのインタラクションを行う実際的研究 3.高齢者のアクティブインタラクションシステムの開発と実験: 高齢者が身に付けている装着・生理センサと居住環境内に設置された視覚・音声・環境センサは、高齢者からの働きかけに応じて、高齢者とインタラクションを形成する。本研究は、センサデータから高齢者の動作と状態を推定し、出力機器を通して高齢者にアクティブに働きかけることを目指している。本課題については、研究状況の変化に伴い、成果の期待できる内容を検討していく。また、研究協力者の状況を勘案しながら、研究の進展を見守る。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は、研究論文掲載料や論文校閲等のその他の費用が多くかかり、物品費、旅費、謝金等を抑制した。2019年度は、研究発表と情報収集の旅費、研究実施の謝金、研究論文掲載料、論文校閲等の費用がかかる予定であり、配分予定の当初予算と合わせて、その支出に充てる計画である。
|