研究課題
本研究では「家庭」科目での食生活や人生設計、また家族・家庭等の幅広い領域の様々な場面を使って、生活の中の「遺伝」を扱う学習プログラムを検討している。共同研究者が連続で実施したH29年度およびH30年度のひらめきときめきサイエンス事業において企画段階から参加し、遺伝子解析実験を取り扱った。H30年度は「食肉の遺伝子分析と肉質への影響」のテーマとし、実施後に受講者の感想を聞いたところ、多くの高校生が遺伝子に興味を持っており、その実験を体験してみたいと回答した。そこで引き続き遺伝子や遺伝を身近に感じることのできる家庭科教材の開発と授業実践を行った。食生活分野で扱うことが可能な遺伝子を扱う実験教材として、本年は豚肉の品質を判別する遺伝子検査教材の開発を試みた。豚毛検体よりDNAを抽出し、食肉品質判定の参考となる遺伝子配列部位をPCR法で増幅し、さらに電気泳動法で可視化した。本年度は50分間の家庭科授業時間内に結果を出せるよう、メインとなる実験を中心に教材化した。その開発教材を用いて家庭科の専門科目を開設している高校で授業実践を行った。授業後には食品の遺伝子や遺伝子組換え食品に関するイメージが変わったとの感想が多く聞かれ、高度の内容ではあったがある程度の授業の効果はあったと考えられた。また、新たにヒトの遺伝を取り扱うための新たな教材開発を検討した。生活習慣病予防につなげる自分や家族の遺伝情報を踏まえた視聴覚教材を作成中である。教材開発にあたっては本学の臨床遺伝の専門家の助言を受けて作業を進めている。研究遂行に関して了解の得られた家庭科教員にモニター授業を依頼した。授業の前後に生徒へのアンケートを行い、現在教材の有効性を分析中である。
2: おおむね順調に進展している
複数の教材を計画し作成・開発中である。高等学校家庭科の現場でモニター授業を行い、それらを評価するアンケート調査と分析を通して教材の有効性を検討している。
本申請課題の最終年度となり、これまでに開発した複数の「遺伝」や「遺伝子」に関する教材を用いた授業に関し、生徒や教師へ実施したアンケート調査を分析し、家庭科授業における有効性を検証する。共通教科「家庭」の授業で使いやすい教材とするために、パイロット授業実践をした教員と共に教材の修正を行う。また必要に応じて補助教材や資料集を作成する。開発教材を複数の家庭科科目で展開できるよう、より使いやすい教材・学習プログラム例を構築する。
年度末に共同研究者との研究打合せや情報交換のための旅費支出を予定していたが、スケジュール調整ができず、取り止めた。メール等でのやり取りを密に行うことで対応した。残額は、平成31年度分と合算して成果発表のための旅費等に使用する予定である。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)
日本家政学会誌
巻: 69 ページ: 746-756
PLoS One.
巻: 13 ページ: -
10.1371