研究課題/領域番号 |
17K00756
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
横田 明子 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 名誉教授 (00210609)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 公的医療保険制度 / 持続可能性 / 消費者教育 / 消費者市民社会 / セルフメディケーション |
研究実績の概要 |
わが国では、消費者基本法や消費者教育推進法が施行され、消費者は自らの利益のために自立し自らの選択と行動が社会に与える影響を考慮して公正で持続可能な社会の確立に貢献し消費者市民社会の形成に参画することが求められている。 ところで、わが国の医療保険制度は、各医療消費者がいつでも好きな時にどこでも希望する医療機関で安価な自己負担によって受診することが可能であると規定している。長い間それが日本の利点であるとの国際的評価を受けてきたが、最近はそれがかえって災いしていると言われる。医療消費者は疾病になればいつでも気軽に医療機関で治療できるため、自己の健康管理を怠り定期検診を受けずに重症化してから受診する傾向があり、国民医療費を必要以上に膨張させていると指摘される。逆に、軽度な体調不良であっても重症患者を専門的に治療する大病院を受診するため、重症の急病人の受診を妨げ高度な専門的技術を有した医師を疲弊させていると言われる。これらが公的医療保険制度の持続可能性に大きな影を落としているとされる。 消費者教育は、悪徳商法から身を守る方法ばかりでなく、適切な健康管理や検診・受診行動をとることによって国民への医療サービスを保障している公的医療保険制度の持続可能性を確保するための行動を消費者に教育することも必要と言える。 これまでの本研究では、医療保険制度、保健学、セルフメディケーション等に関する国内外の文献や資料の収集、分析を行い、医学者や公衆衛生・保健学者によるコメントやアドバイスを受けた。また、協力の得られた地方自治体の医療行政や医療費に関するデータを分析し明らかにした。また、21世紀の国民健康づくり運動「健康日本21」の報告(案)の分析を行った。さらに、一般市民を対象にした調査の分析により健康状態・意識・行動の実態と問題点を明らかにし、消費者教育として必要な点について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度は、一人当たり医療費や地方自治体の保健活動、住民のセルフメディケーション意識などに関して特色がある地域における実態調査および意識調査を実施し、その結果を踏まえて最終的な結論を出す予定であった。しかし、コロナ禍により調査に対する協力が得られず実施が見送られた。また、新型コロナウィルス感染のパンデミックが発生したことにより、地方自治体による保健活動やセルフメディケーションに対し社会から求められる国や地方自治体の行政、消費者の行動に求められる事項に大きな変化が見られた。このため、消費者教育に含む内容にも再検討の必要性が生じた。このため、研究が最終段階に至らず、遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、さらに新たな文献や資料の分析を行い、今回実施できなかった実態調査や意識調査に代わるデータの収集を行い、多様なウィルス感染が一般化すると予想されるこれからの社会に対応するセルフメディケーションと消費者教育について熟考し、公的医療保険制度を持続可能にする消費者教育の構築についての結論を提示する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、コロナ禍により予定していた調査やその分析、学会発表ができず、支出が予定通りに行かなかった。このため、次年度使用額が生じた。 次年度もコロナ禍が続くと予想されるため、研究当初に予定した方法での調査を実施することは困難と考えられる。それに代わる方法で調査を実施し研究全体の結論を導き出して、研究費をすべて消化する予定である。
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