本研究の目的は、働く女性のみならず、男性も子どもも“幸せ”になる職場の女性活躍は、どうすれば実現するのかを、個人と家族の生活の質向上を目指す家政学とジェンダーの視点から、明らかにすることである。 研究方法としては、文献調査と、日本で雇用されて働く男女(正規雇用・非正規雇用)への量的調査を行った。得られた主な知見は以下の通りである。 第1に、文献調査では、日本では女性全体の労働力率の上昇のみならず、子育て中の母親の労働意欲も高まっている傾向が見られたが、本研究での量的調査からは、彼女たちの職業キャリアの構築に対する意欲が高まる傾向もうかがえた。しかしながら昇進への意欲に関しては、働く女性の中で特に高まっている傾向は見られなかった。調査の中で、彼女たちの中には、休憩時間を抜いたり、食事や睡眠の時間を短くしたりして、何とか仕事と生活のバランスを取ろうとする人も一定程度見られた。 第2に、働く男性に関しては、女性の就労を肯定する意識が高く、女性が職場で活躍することに賛同する男性が多く見られた。しかしながら実際の生活において、特に家庭生活における家事やケアの分担に関しては平等な遂行はほとんど見られなかった。職場における女性活躍を一般論としては賛成しつつも、自分の配偶者がキャリアを積みやすくなるための家庭生活での労働の実践を行う男性は、現状では非常に少ないと言わざるをえない。 第3に、男女ともに、雇用者がもつ性別役割分業意識の強さと、経済活動の中で家庭生活やケアに付与される価値意識には関連が見られた。また働く女性が、男女ともに職業生活と家庭生活が調和した環境に向けて行動する意思は、職階が上がるほど高まるというわけではなく、働くことの問題を話せる空間や労働の学習経験も影響していることがうかがえた。
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