研究課題/領域番号 |
17K00762
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
三橋 俊雄 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 研究員 (60239291)
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研究分担者 |
大場 修 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (20137128)
田中 和博 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (70155117)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 台湾原住民 / 遊び仕事 / 狩猟文化 / 自然共生 / サブシステンス / 民族自立 / 民俗学 / タロマク族 |
研究実績の概要 |
本研究は、台湾原住民タロマク族が現在も実践し続けている狩猟について、「遊び仕事(マイナーサブシステンス)」の観点から考察し、以下を明らかにした。 タロマク族の狩猟文化には、自らの身体と精神を以て目指そうとする「(立派な猟師になるという)真正な猟師像」や「‘agamoco(名誉の冠り物)」「Sanga(一番の走者への栄誉)」などに見られる「(身体的活動を通した)社会的象徴性」、(猟肉の分配に見られる)共同体的規範としての「分享の精神」など、部族内における誇りや喜びの源泉となりえる社会的・精神的な価値が内包されており、そうした価値こそ、狩猟が「遊び仕事」である所以であることを見て取れた。 さらに、彼らは、現在社会の近代化やマイノリティゆえのエスニック・アイデンティティ消失の危機を感じながらも、自らの伝統的猟域における狩猟を、民族自立に向けた運動の一つとして実践している。その彼らの行動の原点こそ、狩猟文化が内包する「遊び仕事」という社会的・精神的な価値にあることを明らかにした。 加えて、明治期の日本において柳田によって発見された椎葉村における「狩りの作法」が、台湾において古来から今日に至るまで伝承され実践されてきた原住民の狩猟文化と、100年の時を経て共に「名誉、喜び、男としての生きがい」という「遊び仕事」の世界で繋がった意味は大きいと考える。 このように、本論で着目した「遊び仕事」は、従来定義されてきた「単に消滅しても構わない副次的生業」ではなく、台湾原住民タロマク族の「狩猟・遊び仕事」が民族の誇りや精神的共同性という価値意識の基底をなし、現代のタロマク族が志向するエスニック・アイデンティティの再構築や民族自立運動の源泉としての「必要不可欠な副次的生業」であることを明らかにした。
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