これまでに、睡眠や食習慣を反映させた精神神経疾患の病態動物モデルを作製し、その中でも、本研究においては低不安行動に着目し、特にヒスタミン神経系の関与について検討を行っている。平成30年度の検討では、睡眠剥奪ストレスの繰り返し負荷による低不安行動の発現に、視床下部におけるヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)発現量の増加に伴い産生されたヒスタミンが、H1およびH3受容体を刺激することが関与している可能性を示した。これに続き、令和元年度では、長期粉末食飼育マウスの低不安行動の発現におけるヒスタミン神経系の関与の検討は不十分であったため、H1受容体(平成29年度に実施)以外のH2、H3およびH4受容体遮断薬投与の効果、不安関連行動に関与する脳部位におけるヒスタミン代謝酵素であるヒスタミン‐N‐メチル基転移酵素(HNMT)の発現量について検討を行った。 具体的な成果として、H2およびH3受容体遮断薬の投与は、粉末食飼育群の低不安行動を改善したが、H1(平成29年度に実施)およびH4受容体遮断薬を投与したときに改善作用は認められなかった。また、粉末食飼育群の海馬におけるHMT発現量は有意に増加したが、前頭皮質および扁桃体では差が認められなかった。 以上の結果から、長期粉末食飼育による低不安行動の発現には、視床下部のHDC発現量は関与せず(平成30年度に実施)、特に海馬において、HNMT発現量の変化からヒスタミン量の増加が示唆され、そのヒスタミンがH2およびH3受容体を刺激した結果発現する可能性が示唆された。
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