研究課題/領域番号 |
17K00773
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研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
瓜生 淑子 京都女子大学, 発達教育学部, 教授 (20259469)
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研究分担者 |
杉井 潤子 京都教育大学, 教育学部, 教授 (70280089)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 育児休業制度 / ジェンダー・アンバランス / 母親育児の推奨 / 0歳児保育 / 短時間勤務制度 / 部分育休 |
研究実績の概要 |
前年度の取り組みで、育児休業のジェンダー・アンバランスな普及は、結果的に旧来からの母性育児の推奨という役割を担いかねないという問題点を指摘した。今年度は、保育園児・幼稚園児の父親の育児・家事参加度を分析し、「性別役割分業観」よりも、労働拘束時間の方が、それらについての説明力が高いという現実を学会発表で報告し、男性の長時間労働が前提となっている中では、育休等の諸制度の「拡充」だけを進めることが必ずしも問題の解決にはならないことを示した。 さらに、前年度の研究で指摘された育児休業制度の改革提案を具体化するために、育児休業法上義務化された短時間勤務について、検討した。また、8月末に北欧(スウェーデン・フィンランド)の保育関係機関を視察し、情報収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
訪問調査の結果、スウェーデンでは、「部分育休」と呼ばれる制度が普及していることがわかった。これは、有給の育児休業と重ねて無給の短時間勤務を併用することにより、長期間、完全に仕事から離れてしまうことを防ぐ制度としても捉えられることが把握できた。 これにより、育児休業の具体的な改革提案として、「育児休業」と「短時間勤務」の併用という視点が明確になった。さらに、『政治の中の保育』(2006年;翻訳2010年、かもがわ出版)を出版されたBarbara Martin Korpi 氏と連絡が取れ、育児休業制度等との関係を押さえつつ、保育制度をとらえる視点から、スウェーデンの保育に関する情報を提供して頂く約束が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
1)次年度夏にはスウェーデンを訪問してKorpi氏と氏の後輩の教育省の関係者から情報を得る約束を頂いた。また、ストックホルム大学の社会学者である Ann-Zofie Duvander氏とも連絡を取り、スウェーデンの「部分育休」制度の実情を現地で把握するために連絡調整中である。 2)日本企業の中でも、「育児休業を長引かせることだけが女性の活躍を支援することにならない」という認識が広がり始めており、それまで従業員サービスとして「拡充」の方向が取られてきた育児休業取得期間を短縮化し、代替制度を提案する会社も出始めている。そうした国内の企業への訪問も取り組んだ後、育児休業の具体的な改革提案を行いたい。 3)0歳児保育の効果の検討では、厚生労働省が実施主体である「21世紀出生児縦断調査」のデータが得られる見通しがたったので、これを借用し二次分析することで、育児休業による家庭養育の長期化と0歳児保育の効果について、実証的に比較・検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では予定のなかったKorpi氏を年度末にお招きし、「保育制度・育児休業制度をめぐるせめぎ合い-子どもの権利と母親のキャリア発達の保障という視点から-」と題して保育・家族福祉に関わる実践家・研究者を対象としたシンポジウムの開催のメドがたったため、消耗品等の出費を極力抑え、氏の旅費に充てる目的で次年度使用とすることとしたため。
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