研究課題/領域番号 |
17K00773
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研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
瓜生 淑子 京都女子大学, 発達教育学部, 教授 (20259469)
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研究分担者 |
杉井 潤子 京都教育大学, 教育学部, 教授 (70280089)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 育児休業制度 / 男性の育児休業取得率 / 制度の母親就労継続効果 / 0歳児保育 |
研究実績の概要 |
育休取得が母親とその子どもに与える影響(効果も含む)を検討した。その結果を紀要論文で以下のようにまとめた。1)「父親の取得義務化」案まで提案されるなど、現在の政策重点が、男性の取得率の低さに焦点が移ってきている状況を指摘した。しかし、その中で、育休中の部分就労を可能にする案や分割取得がより柔軟にできる案などの検討も始まっており、それを男性取得の際の便宜にせず、男女を問わずの「取得による長期の職場からの離反」を防ぐ方策として議論されるべきことを指摘した。2)厚生労働省の21世紀出生児縦断調査の公表データを使用して、母親の就労継続への育休制度の寄与について検討した。その結果、全体として、母親の就労率は出産で半減すること、特にそのことは、パート・アルバイトの母親で大きいこと、しかし、常勤母親でも子どもが小2になるまで、常勤を続けた者は4割を切るなど、育休の効果は限定的なことを示した。3)育休をめぐる議論であまり注目されていない点である、育休取得者がいる職場での「代替」措置について、2000年代前半と後半では大きく状況が異なり、実質、代替措置が取られないままになっている状況を人事院のデータの分析から示し、比較的対処がされていると言われてきた公務員でも、いわば育休が“人減らし”の一端を担っている実情も指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
男性の育児休業取得率向上に政策的力点がおかれていることについては、さまざまな角度から問題点を指摘した。しかし、男性に育休取得を求めることが就労上にもたらす影響への懸念から、平成30年度報告書に記載した論文で紹介した、北欧の「部分育休」に似た構想も出てきた。これらは論文で報告した。しかし、この「部分育休」についてと、「0歳児保育」が普及していない背景についてより明らかにするため、スウェーデン関係者とのやり取り(出張や訪問)を計画していたが、2020年からの世界的なパンデミックで叶わなかった。 また、厚生労働省の「21世紀出生児縦断調査(平成13年出生児)」及び「21世紀出生児縦断調査(平成22年出生児)」の個票データを借り受けて二次分析を行うため、年度当初にそのビッグデータ借用申請を行ったが、厚生労働省の審査に時間を要し、ようやく年度末に提供が受けられた。したがって、そのデータ分析は次年度送りとせざるを得なかった。 以上のことから、研究としてはやや進捗が遅れているといわざるをえなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1)予定していたスウェーデン現教育研究省職員及び元職員の来訪は叶わぬままパンデミックが続く状況にあるが、スウェーデンの部分育休について、実現可能な方法で情報を収集した上で、職場からの離反を長引かせない育休制度の改革の提言につなげたい。 2)ようやく借用がかなった厚生労働省の「21世紀出生児縦断調査(平成22年出生児)」の個票データについて、急ぎ、二次分析を進め、0歳児保育の経験が、子どもの発達や養育者のwell-beingに与えるポジティブな効果について実証研究を行うことで、待機児童対策の一端を担う育児休業制度の現状の問題点をさらに明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
スウェーデンの教育研究省関係者のお二人を保育学会のシンポに招き、同国のプレスクール全入運動の歴史と背景について講演いただき、育休制度との関連で0歳児保育について議論する場を計画していたが、世界的なパンデミックで来訪が実現しなかった。次年度もお二人の来訪は叶わぬ状況が予想されるので、その費用は、労働経済学・社会学など、他の分野の研究者との研究交流やシンポジウムの開催にあて、育児休業の抱える問題について多角的に捉えた上で、その結果を共著書にまとめたい。
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