研究課題/領域番号 |
17K00781
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
田中 稲子 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (60345949)
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研究分担者 |
藤岡 泰寛 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (80322098)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 高経年団地 / 在宅高齢者 / 住宅改修 / 温熱環境 / 熱中症対策 / ヒートショック対策 / 介護保険 / 多職種連携 |
研究実績の概要 |
29年度は研究初年度として、高齢世帯が温熱環境リテラシーの向上を図りながら住まいや住まい方を改善できるような仕組みのあり方について検討するため、まず、地域ケアプラザ(地域包括支援センター)へヒアリングを行った。介護保険制度内で対応する制約や、認知症対策に追われる現状などから、介護期だからというよりはむしろ予防的観点からの温熱環境対策(熱中症対策やヒートショック対策)が重要であるとの指摘を得た。そこで、自立から要支援程度の在宅高齢者が実施した(予防的観点からの)温熱環境対策(住宅改修)事例を、改修の自由度の高い地方都市(大分市、豊後高田市、別府市)を例に調査した。この結果、改修の際に高齢者の住まい方・暮らし方ニーズを捉え専門的支援(多様な専門分野からの助言や評価)を行うことで、より適切な改修や商品選択を実現できる可能性が確認できた。 また、温熱環境リテラシーの獲得手法を検討する前段階の基礎調査として、横浜市梗概の高経年集合住宅を対象として、夏期の温熱環境の実測と環境調整行動に関わる住まい方のヒアリング調査を高齢世帯を中心に行った。階数の違いの影響やエアコン使用や通風の頻度による室内温熱環境の違いが確認された。しかし、冷夏であったことから、住民を含む関係者に対する熱中症対策検討のための提示用データとしては、さらにデータの蓄積が必要である。冬期については、シミュレーションを用いて高経年集合住宅をモデルとする室内温熱環境の把握を試みた。また、現状では低断熱の住宅に対し、簡易断熱した場合の改善効果についても検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、高経年団地における在宅高齢世帯を対象とした熱中症対策やヒートショック対策などの住まい・住まい方の改善の仕組みを提示することを目的としているが、介護保険制度等の現行の仕組みにおける、住まい・住まい方改善の可能性に関する調査および、高齢世帯自身が実践する住まい方および室内温熱環境の把握は概ね予定通りに行うことができた。しかしながら、夏期の室内温熱環境の把握については、冷夏が影響したため翌年度にも追加調査が必要と考える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、予防的観点からの住宅改修事例調査を、改修の自由度の高い地方都市において進めるとともに、こうした事例をふまえた介護専門職種の方々との意見交換会やワークショップを設ける予定である。特に、本研究計画の主な対象は都市部の高経年団地であり、地方都市とは異なるアプローチが求められる。 このため、実際に高経年団地において空き住戸等を活用し、温熱環境対策を施した住空間の体験をふまえた温熱環境リテラシーの獲得や、それ以外の情報提示のあり方についても検討を行う予定である。実態に即した夏期の室内温熱環境等のデータ提示に向けては追加調査も行うものとする。 このとき、ワークショップの対象者として、介護専門職種の方々だけでなく、団地居住の高齢者にも広く体験の機会を提供し、体験後のアンケート調査やヒアリング等から、温熱環境リテラシー向上策のあり方や、地域ケア会議等との連携のあり方について知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の見込みから節約できたため、年度末にかけて整理していたデータを保管する記録媒体費用として翌年度使用する予定である。
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