高齢居住には近隣との交流や地域から日常的支援が重要である。しかし、地域連携・協働の多世代共生コミュニティ構築と維持の困難性も指摘される。本研究は地域連携・協働による多世代共生コミュニティ構築の成功先進事例として知られる社会福祉法人佛子園が開設運営する「シェア金沢」、及び平成30年4月 開設の佛子園による「生涯活躍のまち」認定プロジェクト「輪島KABULET」を調査対象とし、地域連携・協働関係の構築・推進のあり方に示唆を得ようとしている。 「シェア金沢」は2017年に町会長、施設内事業者等、2018年にサ高住居住者にヒアリング調査を実施した。「輪島KABULET」は2017、2018、2019年に拠点施設周辺地区世帯の悉皆ヒアリング調査等を実施した。2020年以降はコロナ感染症の影響から調査は実施していない。 「シェア金沢」では、施設内事業者や周辺町会及び施設職員がサ高住居住者等と関係構築へ多様な働きかけをしているものの、一部に留まる。近隣の小学校との間では、放課後児童クラブの開設や各々の行事等で定期的な交流が生まれた。 「輪島KABULET」では、3年間で単身世帯の増加、高齢化率の上昇、平均家族人数の減少など、高齢化、家族規模縮小が見られた。居住の状況は、空き家の増加、空き地化が進んだが、空き家・空き地への新規入居・新築(予定含む)の事例もみられた。近所づきあいなど地区住民の交流は全体としては促進している。施設の利用については、拠点の温泉は64%、そば処は44%の利用率で増減はほとんどない。佛子園主催イベントへの参加者率は増加し、参加希望も多い。今後は地域連携・協働の推進役を担う可能性がある住民の存在が期待されるが、イベント等の企画に関わりたいとする者は3%と非常に少なく、「輪島KABULET」が施設やイベントを提供し、住民は享受するという形が定着してきたようだ
|