研究実績の概要 |
本年度は繊維状試料での物理的要因によるTHzスペクトルのS/N比の検証を行った.材質による吸収ピークがTHz測定波長帯に存在しないことを確認した同一材質のナイロンフィラメントを使用して,繊維直径が165, 217, 338, 532, 749, 1163, 1563μmの7種類で実験した.その結果,直径500μm以上の試料では干渉縞の影響がTHzスペクトルに出現したため,500μm以下では高S/Nで計測可能と実証された.500μm以下の試料では繊維試料の本数と設置間隔には大きな影響を及ぼさず,設置間隔が広くなるにつれてTHz光の透過率が上昇したため試料による吸収が少なくなり結果的にはTHz吸収スペクトルのS/N比が減少することも確認した.本結果は14th Asian Textile Conferenceにおいて報告した. 繊維の表面構造の影響を調査するため表面が均一に平らで厚さが異なるナイロンフィルムを計測したところ,厚さが大きくなるにつれてTHzスペクトルの強度が減少したが,干渉縞の影響は出現しなかった.よって,干渉縞が発生する影響は繊維の直径そのものではなく繊維を並行にした際に隣接する繊維間で出現する凹凸部による試料の表面形状が影響していることが考察された.繊維直径が500μm以上で干渉縞が発生したことから凹凸部が250μm以上出現すると高S/N比のTHzスペクトルが計測不可となる. 以上より,本年度における当初計画していた繊維状試料測定時の物理的要因の影響については,繊維状試料を並列した際の表面形状がTHzスペクトルのS/N比へ影響し,波長以上の凹凸部が出現するような繊維状試料では干渉縞が発生する.一方で表面形状が上記条件をクリアしていると設置間隔を狭めて並べることで高S/N比のTHzスペクトルは測定可能であった.
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