毛髪の光損傷の抑制法を検討し、(+)-カテキン(Cat.)・ロスマリン酸(RA)・クルクミン(Cur)・L-システイン(Cys)といったバイオリダクタント(BR)による処理で劣化が抑えられることがわかった。その機構について、毛髪の損傷・劣化は主に酸化反応によって引き起こされていることとBRの還元作用が毛髪損傷の進行を抑制していることが判明した。BRの毛髪へ吸着量はCys<<Cat.=Cur<RAの順にRAが高く、それぞれの還元性も同順となる。Cat.・Curの還元能は標準物質のDL-α-トコフェロールとほぼ同じで、RAはその2倍である。 毛髪の光損傷はメラニン色素が失われた脱色毛でより進行することを明らかにしたので、染毛と光損傷抑制加工の同時実施系が望ましい。しかし、それが可能なBBMはCat.やカテキン類で、チャから得ようとすると飲用分野の原料供給への影響と高コストが課題となる。そこで、廃棄天然材料からの染色加工剤を検討し、世界最大の植物油原料であるアブラヤシの搾油後の廃棄物の利用を研究した。その抽出物の染色性・吸着性を調べ、各部位の内、種子殻抽出物が人毛に近いタンパク質繊維である羊毛を始め、絹・綿・麻・ナイロンを染めることがわかった。染色繊維の耐光堅ろう度は高い。この抽出物はカテキン類やピロガロール化合物などを豊富に含み、還元性も示す。次段階で種子殻抽出物の染毛性を検討する。 他方、可視光線による染毛において、それぞれ光吸収波長領域の異なる光増感剤(ローズベンガル・メチレンブルー・ビタミンB2)の混合系で処理した毛髪にCat.水溶液中で光照射すると、最も効果的に染色され、耐光堅ろう度が高いことがわかった。染料は光照射下Cat.の酸化で生成していて、3種混合系処理毛髪への光照射が最大の酸素消費を示し、染料生成反応が促進されるという結果が得られた。
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