研究課題/領域番号 |
17K00787
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
山田 由佳子 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (20304074)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肢体不自由児 / 医療的ケア / 既製服 / リフォーム / 特別支援学校 |
研究実績の概要 |
本研究は、肢体不自由児を対象とした既製服リフォームによる衣生活改善を目的としており、特別支援学校での支援システムの構築を目指している。 H29年度は、まず聞き取り調査を行った結果、肢体不自由児全般に対する支援もさることながら、医療的ケア児に対する支援が特に必要であると判断された為、本年度に肢体不自由児全般を対象としたアンケートを実施する予定であったが、医療的ケア児を中心とした調査に変更することとし、アンケートの実施をH30年度に変更することとした。 更に各種専門書による医療的ケア児に対する衣生活支援についての記載の分析を行って、リフォームを行う既製服を医療的ケア児を中心として検討した。医療的ケア児では主に気管切開、胃ろう手術をした後の、衣服が問題と考えられる。聞き取り調査では、気管切開ではその後人工鼻か、呼吸器を取り付けるためあまり首の詰まった衣服は着用が難しく、胃ろうでは、経管栄養注入時に腹部を出す必要があり、上下一体型ボディを着用の際は食事の度に下衣まで脱ぐ必要が出てくる等の問題点が挙げられた。医療的ケア児等の支援の為の専門誌をみても衣服に関する記述はほぼ無く、1誌のみに前開き衣服と靴下の工夫が紹介されている記述がみられたのみであった。気管切開や胃ろうに対応するためには前開き衣服が必要であるが、知的障害もある場合、オムツはずし防止の為ボディを着せる場合が多い。そもそもボディは一般には身長95㎝程度までの乳幼児用しか販売されておらず、前開きボディは更に小さいサイズまでしか商品が無いのが現状である。体の大きい子どもの前開きボディは障害児用として一部インターネットで販売されているものの、サイズによっては品切れ状態が続いている。このような状況からも保護者が簡単に既製服をリフォームすることで前開きボディを大きくする、又は胃ろう用の穴をボディに作る方法について検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では研究協力者の通う特別支援学校にて保護者及び教員にアンケート調査を実施する予定であったが、予定していた研究協力者の肢体不自由児が手術、長期入院の為、聞き取り調査が延期された事。又、退院後の聞き取り調査において医療的ケアに対応した衣服を中心にアンケート調査を行う必要性が出てきたため、アンケート項目の検討し直しと、配布対象の見直しを行う必要があったことから、調査をH30年度に行うこととした。 それに伴い、一般的な既製服のリフォーム検討はとりやめて、主に前開きボディや穴あきボディの作成に特化することとしたが、既製服ボディの収集および試作の段階であるため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の肢体不自由児全体を対象とした研究から一歩踏み込んで、医療的ケア児に特に着目して研究を進めたいと考えたため、今後は、気管切開および胃ろう等に対応した衣服を中心に検討を進める。 具体的にはH30年度に医療的ケアについての質問項目を盛り込んだアンケート調査またはインタビュー調査を保護者および特別支援教員に対して行う。 リフォーム対象を気管切開および胃ろう等に対応した衣服に特化してリフォーム方法を検討することとし、気管切開児に必要なカニューレバンドの製作についても検討を進める。マニュアルの作成、詳細なビデオ教材の作成を進め、それぞれ保護者向けと指導用を作成する。 H31年度には保護者を対象とした講習会を予定通り開催し、マニュアルとビデオ教材の改訂を行う。更に、本学の特別支援学校に配属される可能性のある学生に肢体不自由児や医療的ケア児の衣生活についての理解を深めさせ、既製服リフォームに対するアドバイスが出来る能力を身につけさせる為の教育プログラムを検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた研究協力者の肢体不自由児が手術、長期入院の為、聞き取り調査が長期間延期された事。又、退院後の聞き取り調査において医療的ケアに対応した衣服を中心にアンケート調査を行う必要性が出てきたため、アンケート項目の検討し直しと、配布対象の見直しを行う必要があったことから、調査をH30年度に行うことに変更した為、アンケート調査にかかる費用を30年度にくりこした。 当初の肢体不自由児全体を対象とした研究から一歩踏み込んで、医療的ケア児に特に着目して研究を進めたいと考えたため、一般的な既製服の収集ではなく、アンケートによって得られた医療的ケア児がもっとも必要としている衣服について明らかにした上で収集を行いたいと考え、既製服の本格的な収集に関してもH30年度に繰り越すこととした。 従って、H30年度には繰り越した費用にてアンケート調査と既製服の収集を行い、H30年度分の助成金にて予定通りビデオマニュアルの作成を行う予定である。
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