本研究は、自動車、家電製品、日用雑貨など手に触れて用いられる材料の触感を、それらの材料特性を用いて定量的に評価し、最終用途における触感の指標を作成することを目的としている。特に、素材そのものによる触感、さらにはその成形品の層構成や表面性状などによる触感の変化について、評価方法、評価結果の表現手法を確立し、定性的かつ定量的に表現することにより共通軸を完成させ、素材開発に結びつけることを可能にし、材料処方、層構造、表面性状などを含めた提案型の開発を行うことで、ニーズをいち早く獲得するとともに、ニーズを満足するソリューション提供を実現することをめざした。 H29年度は、オレフィン系熱可塑性エラストマー系高分子材料の文献調査と企業関係者のヒアリング調査から、この材料の触感に関わる評価項目を決定した。H30年度は、それに加えて人工皮革を試料として、KES装置を用いて、試料の圧縮特性、表面特性、熱移動特性等の物理特性を、複数の条件で測定し、主観評価と最も相関の高い物理特性の測定条件を決定した。R元年度は、人間の感覚と材料の物理特性との関係を明らかにするため、硬さ、クッション性、なめらかさといった風合いと触感の良さに関する主観評価を行い、測定データとの相関をとった。布の風合いの客観評価方法を応用して、オレフィン系熱可塑性エラストマー系高分子材料と人工皮革の風合いの客観評価の可能性を検討した。しかし、布や衣料用皮革の風合い客観評価式では評価しきれない部分もあり、評価式の開発を行った。「しっとり」と「さらさら」については、ウォード法によるクラスター分析を実施し、物理特性値との相関が高かったクラスターの評価値を主観評価値とした。オレフィン系熱可塑性エラストマー系高分子材料と人工皮革各試料群で評価式を開発して、評価式の有効性が確認された。
|