介護事業所が地域ケア拠点機能を持つことは様々な心身レベルの高齢者の地域居住を支えることにつながると考えている。2019年度は、(1)アクティブシニア、(2)在宅要介護高齢者、(3)施設入所者の地域居住を支える方策を探るために多職種多専門連携によって以下を行った。 (1)アクティブシニアのフレイルの実態を分析した。「栄養状態良好」の105名を抽出し、買い物や調理の状況、生活ニーズ等を分析した。その結果、アクティブシニアは生活行為の代行者ではなく、自らの生活行為をサポートしてくれるようなサービスを求めていることがわかった。社会的参加へのニーズも高く、アクティブシニアに向けた介入の方向性がわかった。この結果から、アクティブシニアへの料理教室開催に向けて電気圧力鍋等を使った簡易調理法を検討したが、新型コロナウィルス感染拡大防止の観点から教室開催は見送った。 (2)在宅要介護高齢者21名と(3)施設入所者24名に対しては、13か月間、ロイシン高配合食品を摂取してもらい、その効果を歩行速度と歩数の測定によって把握した。そして、歩行率と歩行比を分析した結果、対照群との比較において、ふらつかない歩行へと移行する効果が見られ、要介護高齢者の生活機能改善に向けた介入の有効性が示唆された。 さらに、(1)アクティブシニア、(2)在宅要介護高齢者の社会的フレイルについて横断的な分析も行った。その結果、外出は心身レベルの低下に伴い減少していくが、別居家族との関係や友人関係は心身レベルか自立かそうでないかの段階で大きく変化することがわかった。一方で、近所付き合いは心身レベルが相当に低下するまで維持される関係性であることもわかり、コミュニティ構築に向けた介入の必要性が示唆された。 2019年度は補助事業最終年度として、高齢期の地域居住に向けて介護事業所が担い得る機能を抽出することができた。
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