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2017 年度 実施状況報告書

天然染料およびラッカーゼ酵素を用いる環境調和型羊毛染色

研究課題

研究課題/領域番号 17K00795
研究機関和洋女子大学

研究代表者

長嶋 直子  和洋女子大学, 生活科学系, 准教授 (30459599)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード環境調和型染色加工 / ラッカーゼ / 天然染料 / 酸化還元酵素 / 発色 / 脱色 / 洗浄
研究実績の概要

近年、地球環境問題から、持続可能で環境悪化をきたさない天然由来物質が再認識されてきている。そこで本研究は、JSPS科研費23500916およびJSPS科研費26350078をさらに発展させ、生体由来物質である天然繊維(羊毛)、天然染料および酸化還元酵素(ラッカーゼ)を用いて、持続可能で環境調和型染色加工を目指すことを目的とする。
平成29年度は、多価フェノールを有する天然染料に対する酸化還元酵素ラッカーゼの作用と羊毛染色への可能性を検討した。ラッカーゼの2つの作用として、天然染料の酸化反応による共役系の切断に伴う分解・脱色、およびフェノール性水酸基からの水素引き抜き反応による、キノノイド構造の形成に伴う発色が期待される。
天然染料として構造既知で試薬として市販されているカルミン酸、ケルセチン、ベルベリン、ヘマトキシリン、ヘマテイン、および類似染料としてインジゴカルミンの6種を用いた。酵素はTrametes sp.由来のラッカーゼを主成分とするラッカーゼM120(天野エンザイム)、酸化還元伝達物質であるメディエーターとしてフェノチアジン-10-プロピオン酸(PPT)を用い、天然染料の退色および発色挙動を分光学的方法によって調べ、退色速度係数を求めた。
その結果、ラッカーゼは天然染料に対して次のような効果があることが分かった。すなわち、(1)本研究で用いたラッカーゼはキノノイド構造を持つ天然染料に対して退色効果は大きく、メディエーターを添加すると退色効果はさらに大きくなる。(2)ベルベリンのようにキノノイド構造を持たない天然染料は、ラッカーゼを添加しても全く退色しない。(3)多くの水酸基を持ち明確なλmaxを示さない天然染料は、ラッカーゼ添加によって紫外可視吸収スペクトル全体が上昇し、水酸基の一部がキノノイド構造を形成して、結果的には濃色になる傾向を示す。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究で用いたTrametes sp.由来の酸化還元酵素ラッカーゼは、複雑な化学構造を有する天然染料に対して、2つの作用、すなわち脱色、および発色効果があることが明らかになった。本研究課題を遂行する上で最も重要である基礎的データを得ることができた。

今後の研究の推進方策

天然染料の化学構造は多岐にわたっており、また用いたラッカーゼの基質特異性は顕著で、ラッカーゼ添加効果は非常に複雑である。そこで、今後の研究は以下のように取り組む。
(1)まず、初年度の結果をもとに、先行研究JSPS科研費26350078で用いたラッカーゼM120以外の、生体由来物質の異なるラッカーゼのさらなる探索を行い、その有効性を調べる。それぞれのラッカーゼの基質特異性を天然染料の化学構造と関連付けて調べ、本研究の天然染料に最適なラッカーゼを検証する。
(2)ラッカーゼによって酸化分解を受けて脱色する天然染料については、未加工羊毛布を染色後、ソーピング工程におけるラッカーゼ添加による節水効果、摩擦堅ろう度、洗濯時の移染、色泣き等の堅ろう度を中心に検討する。
(3)ラッカーゼ添加によって発色効果がある天然染料については、未加工羊毛布を染色後、従来用いられている金属塩媒染処理の代わりにラッカーゼ処理を行い、羊毛布の表面色濃度をK/S値によって濃色化を評価し、その有効性を検討する。

次年度使用額が生じた理由

(理由)
ごくわずかであるが、平成29年度の当初使用計画額から次年度使用額が生じた理由としては、実験計画に沿った適正量の試薬購入に努め、節約を念頭に取り組んだ結果と思われる。
(使用計画)
生じた次年度使用額は、平成30年度の研究計画に基づき、試薬、ガラス器具等の消耗品購入に充当し、成果を得るために有効に活用する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 天然染料およびラッカーゼ酵素を用いる環境調和型羊毛染色2017

    • 著者名/発表者名
      長嶋直子、高岸徹
    • 雑誌名

      繊維・高分子機能加工第120委員会年次報告

      巻: 68 ページ: 51,54

  • [学会発表] 天然染料およびラッカーゼ酵素を用いる環境調和型羊毛染色2017

    • 著者名/発表者名
      長嶋直子、高岸徹
    • 学会等名
      (一社)繊維学会 染色研究委員会  第54回染色化学討論会

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公開日: 2018-12-17  

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