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2018 年度 実施状況報告書

食品廃棄物色素の抽出と染色への応用ー消臭性測定と染色堅ろう度の検討ー

研究課題

研究課題/領域番号 17K00797
研究機関実践女子大学

研究代表者

牛腸 ヒロミ  実践女子大学, 生活科学部, 教授 (80114916)

研究分担者 稲垣 サナエ  実践女子大学, 研究推進機構, 研究員 (60286896)
本多 素子  実践女子大学, 生活科学部, 助教 (90831959)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード天然色素 / 未利用色素 / 食品廃棄物 / 濃色 / 堅ろう / アンモニア / 消臭
研究実績の概要

18世紀後半に発明された合成染料は、安価、再現性、発色性、染色堅牢度等の点で天然染料を凌駕し、工業製品としての繊維製品に大量に使用されてきた。しかし近年、環境の時代になり、人々の関心が自然へと向かい、エコの観点からも環境負荷の小さな天然色素に目が向けられるようになり、合成色素の代替物としても利用されている。特に廃棄物の有効利用が着目され、その一環として、イカ墨色素の分離精製や廃棄物エビ色素の抽出など食品廃棄物からの色素の抽出が酵素などを用いて行われている。こうした天然色素はサプリメントや香粧品などに用いられることが多い。
本研究では緑色の色素として、昨年度とは異なり、道端に生い茂る植物の葉を中心に使用した。オレンジ色の色素としては、果物や野菜の外皮などや落ち葉など有効利用されていない色素を抽出して、濃色で堅ろうな染色物を得ることを目的とした。
今年度は、緑色の色素をクズ、ヨモギ、クローバー、セイタカアワダチソウなどの草葉からと緑茶の茶殻から抽出して染色液とした。オレンジ色の色素をネーブルオレンジ・柿・玉ネギの外皮やイチョウの葉などから得た。それぞれ綿布、絹布、羊毛布を染色した。染色方法は、先媒染、後媒染、同浴媒染、重ね媒染法などにより行った。
媒染剤として酢酸アルミニウムを使用し、後媒染により染色したクズとヨモギによる羊毛布の染色は濃色に染まった。媒染剤として塩化鉄Ⅲを用いて後媒染による重ね染色をしたセイタカアワダチソウによる羊毛布染色も濃色に染まった。
ネーブルオレンジ・柿の外皮色素による羊毛布の無媒染染色は淡色ではあったが、アンモニアの収着が活性炭のそれを越え、柿外皮色素による羊毛染色布は250分後も活性炭の収着量を上回った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

前年度は、色素抽出試料として、家庭から排出される食品廃棄物である緑茶の茶殻、玉ネギの外皮、ブドウの外皮、コーヒー残渣などから、煮沸、還流、ソックスレー抽出、ミキサーによる粉砕などにより、色素を抽出した。溶媒は蒸留水とエタノールを用いた。直接染法では淡色にしか染まらないものが多かったので、媒染染法に切り替えた。金属媒染剤として、塩化第二銅と酢酸第二銅を手始めに使用した。
媒染方法としては、まず先媒染法を用いた。染色布として、羊毛、絹、ナイロン、綿を用いて染色した結果、緑茶茶殻抽出色素の場合、酢酸第二銅で先媒染した羊毛布が最も濃色に染まった。しかし洗濯堅ろう度は2級と低く、実用に耐えるものではなかった。玉ネギ外皮からの抽出色素による染色の場合は、塩化第二銅、酢酸第二銅による先媒染法で羊毛、絹は濃茶色に、ナイロン、綿は黄色に染まり、良好な染色性を示した。洗濯堅ろう度に関しては、ナイロンと綿染色布は4級以上とJISの基準をクリアしたが、羊毛染色布は3-4級で、まずまず、絹染色布は2-3級と実用性には乏しかった。
今年度は、緑色の色素をクズ、ヨモギ、クローバー、セイタカアワダチソウなどの草葉を中心に抽出して染色液とした。オレンジ色の色素をネーブルオレンジ・柿・玉ネギの外皮やイチョウの葉などから得た。それぞれ綿布、絹布、羊毛布を染色した。染色方法は、先媒染、後媒染、重ね媒染法などにより行った。
今年度は媒染剤に酢酸アルミニウムと塩化鉄Ⅲを使用した。今年度もクズ、ヨモギ、セイタカアワダチソウなどは濃色に染まったが、洗濯堅ろう度、日光堅ろう度ともに悪かった。染色堅ろう度の向上に関して工夫をしたい。
染色布の消臭性に関しては、ネーブルオレンジ外皮色素による綿布と柿外皮色素による羊毛布に活性炭を上回る消臭性が見られた。次年度はこの結果を精査したい。

今後の研究の推進方策

今後も、廃棄物色素や未利用色素を使っての、濃色で堅ろうな染色物の実現に邁進する。
媒染剤として、これまでに使用しなかった種々の金属塩やタンニンなどの有機物を検討する予定である。媒染方法についても重ね媒染法などを試み、濃色化を図る。
染色堅ろう度についても洗濯堅ろう度、耐候堅ろう度の向上を図りつつ、これら以外の堅ろう度試験についても試みる。
さらに、今年度手を付けられなかった染色布の消臭性、抗菌性についても検討する。

次年度使用額が生じた理由

ちょうどゼロにはならなかっただけで、次年度の消耗品にあてる。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Deodorization by Fibrous Wastes2019

    • 著者名/発表者名
      Sanae INAGAKI, Hiroko IKEDA, Hiromi GOCHO
    • 雑誌名

      The Japan Research Association for Textile End-Uses

      巻: 60 ページ: 144-150

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 最近の日常衣料品の染色堅ろう度2018

    • 著者名/発表者名
      牛腸ヒロミ
    • 雑誌名

      日本学術振興会染色堅ろう度第134委員会業績報告書

      巻: 24 ページ: 87-91

  • [学会発表] 柔軟仕上げ剤の性能と香りの評価2018

    • 著者名/発表者名
      牛腸ヒロミ、勝俣愛実、高田彩香、城島栄一郎
    • 学会等名
      日本家政学会第70回大会
  • [学会発表] 酸処理と機械的処理をした、羊毛、羽毛、絹による試薬活性炭を越える消臭2018

    • 著者名/発表者名
      稲垣サナエ、牛腸ヒロミ、小見山二郎
    • 学会等名
      繊維学会平成30年度年次大会

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公開日: 2019-12-27  

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