研究課題/領域番号 |
17K00800
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
薬袋 奈美子 日本女子大学, 家政学部, 准教授 (60359718)
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研究分担者 |
寺内 義典 国士舘大学, 理工学部, 教授 (00338295)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ボンエルフ / コミュニティ / 生活道路 / 遊戯道路 / ストリートパーティ / DIYストリート / 住教育 |
研究実績の概要 |
本年度はボンエルフを交通静穏化デバイスとしてだけでなく、交通ルールとして定めるにあたって、経緯・成果についてイギリスを中心に確かめ、生活空間としての道路利用の実態を明らかにした。 イギリスは、他のヨーロッパ諸国がボンエルフを道路の使い方として正式に認めるプロセスをとっていた1970年代1980年代には、類似した空間整備事例を重ね、そういった空間づくりに対するデザインガイドは発行され、意匠公報32においては、道路が通行空間としてだけでなく、滞留空間・生活空間として使われるべきであることが示されたが、他国のように交通標識として定着することはなかった。労働党政権に替わって以降、1998年になってようやく制度として導入されることが決まった。 しかしその際、道路整備に向けた多額の補助金とともに制度がスタートしたこともあり、多額の費用をかけて全面的な道路整備を実施することがホームゾーンの一般的なスタイルとなり、補助金が切れた途端に、整備される道路が少なくなるという問題が発生した。 ホームゾーンの指定件数は多いといえる状況ではない。しかし費用を抑えて住民主導で実施するDIYストリートという取り組みがチャリティ団体により推奨されるなど、道路の使い方を豊かにしたいという動きは今でも見られた。 また近年は、古くからあるストリートパーティを気軽に実施できるよう自治体がコミュニティ活動を応援する姿勢をとり、古くからある遊戯道路を復活させる等して遊び空間として道路を利用する地域が増えたり、健康都市整備といった社会の動きとともに、道路に対する考え方が変化しようとしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イギリスでホームゾーンが導入され、実際に活用されているのかを確かめることができた。実施されて10年程が経過した現状を、住民へのヒアリングとともに確かめることができ、更に制度導入時の議論についても確認することができ、日本が導入する際に気をつけるべき点を整理することができた。 大きく3つの調査を実施することができた。全チャレンジ事業のうち、前庭が多くある住宅にある地区について、前庭におかれたモノを調査し、道路が生活空間として利用されている状況を確認した。また、コミュニティ組織がありホームゾーンの使い方について把握している組織がある地区にヒアリング調査を行い、ホームゾーンの利用実態と地域コミュニティの状況について確かめた。そして、最後にホームゾーンに類した諸制度を比較考察したり、制度の設立経緯を確かめたりする等して、制度の導入・維持・発展についての検討を行った。 更に、イギリスがホームゾーンを導入するにあたって、参考にしたオランダやデンマークの事例とその関係者にヒアリングを実施することができ、日本が今後参考にすべき視点を抽出することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、イギリスのみでなく他国との制度比較を実施し、日本の道路における生活空間確保のために必要な事柄を検討する。この働きかけを実施するにあたっても、類似した国・地域のおける法制度の確認が必要となるため、これらの国々での実態を調査する必要がある。これらの国全てを現地で調査する時間的・予算的余裕はないため、ウェブ、文献でわかる範囲で情報を整理した上で、具体的に調査対象とする国を絞ることとする。
更に、日本での社会実験に向けた準備を始める。実施可能なコミュニティで、海外の事例を紹介するなどして、受け入れ態勢を整える。このために、先ずは海外の事例について整理したわかりやすい資料を作成し、効果的に住民に伝えるための検討を行う。日本での実施にあたっては、複数のコミュニティに働きかけを行い、実現の可能性を模索する。ことにしている。
また、こういった生活空間としての道路空間利用にかかわる学校教育の可能性を検討し、地域での実施に向けた下地づくりを行う。車への依存率が高いことで知られる福井県大野市の小学校等、複数の学校で住教育の可能性を担当教員と相談し、教育材料を作成する。作成された素材を活用して、社会実験を行う地域の小学生にも伝え、社会実験に資する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた研究分担者の海外出張(現地及びヒアリング調査)が、学務等により時間を確保することができなかったため次年度使用額が発生しました。主としてインタビューを共同で実施する予定でしたので、予めメール等で相談のうえ、インタビューに主査のみで臨みました。 しかし、やはり交通計画の専門家である研究分担者がヒアリング・議論すべ点も多々あるため、2018年度に改めて渡航し、調査を実施する予定です。
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